Kindleでは、著作権が切れた多くの純文学作品を無料で楽しむことができます。Kindleアプリ(無料)を利用すれば、スマホ・PC・タブレットなどの端末で読むことも可能です。
それでは早速、Kindleで無料で読めるおすすめの純文学作品31篇をご紹介します。
必読の有名作品
①森鷗外『舞姫』
『舞姫』は、1890年に文芸雑誌『国民之友』で発表された森鷗外の短編小説です。ドイツに留学した主人公が、現地で踊り子と恋をする様子が描かれています。鷗外初期の代表作です。
一般的に、主人公のモデルは鷗外であるとされています。漫画、映画、ドラマ、アニメなどにもなり、長年にわたって親しまれています。
②樋口一葉『たけくらべ』
『たけくらべ』は、1895年に文芸雑誌『文学界』(第25~27号、32号、35号~37号)で連載された樋口一葉の短編小説です。吉原(よしわら。政府公認の遊郭)の近くに住む少年少女の淡い恋が描かれています。
タイトルやストーリーは、『伊勢物語』の23段の和歌が題材になっています。
③夏目漱石『こころ』
『こころ』は、1914年に朝日新聞(4月20日~8月11日)で連載された夏目漱石の長編小説です。1人の女性を巡って争った友人の死を、「先生」が重く受け止めていることを軸に物語が展開されます。
発行部数を太宰治『人間失格』と競っており、「日本で一番売れている小説」と言われています。
④芥川龍之介『羅生門』
『羅生門』は、1915年に文芸雑誌『帝国文学』(11月号)で発表された芥川龍之介の短編小説です。平安時代末期の京都を舞台に、「生きるための悪」が描かれています。
『今昔物語』(こんじゃくものがたり。平安末期の説話集)に収録されている話が元になっています。
平安朝を舞台にした芥川の作品は「王朝もの」と呼ばれており、『羅生門』の他に『偸盗(ちゅうとう)』『地獄変』『邪宗門』などがあります。『羅生門』は、1950年に黒澤明監督によって映画化されました。
⑤太宰治『人間失格』
『人間失格』は、1948年に文芸雑誌『展望』で発表された太宰治の中編小説です。太宰が自殺をする1か月前に書き終えた作品です。実話ではなく創作ですが、太宰の実人生をなぞったような小説です。
ホラー系作品
⑥江戸川乱歩『人間椅子』
『人間椅子』は、1925年に文芸雑誌『苦楽』で発表された江戸川乱歩の短編小説です。男が椅子の中で生活し、一方的にコミュニケーションを取る様子が不気味な小説です。
1970年から数回に分けてドラマ化、1997年と2007年には映画化されています。また、2度に渡って漫画化もされています。
⑦夢野久作『死後の恋』
『死後の恋』は、1928年に雑誌『新青年』(10月号)で発表された夢野久作の短編小説です。
ロシア革命直後のウラジオストクで、通行人をつかまえては自身の身の上を話す奇妙な男が、日本人の軍人に「死後の恋」の話を聞かせる物語です。久作が得意とする、独白体形式で語られます。
推理系作品
⑧谷崎潤一郎『途上』
『途上』は、1920年に雑誌『改造』で発表された谷崎潤一郎の短編小説です。探偵が、犯人に直接種明かしをする形式をとる小説です。
谷崎より8歳年下で、谷崎に傾倒した江戸川乱歩は、「大正6年『ハッサンカンの妖術』大正7年の『金と銀』『白昼鬼語』大正9年の『途上』などが谷崎怪奇文学の頂上期をなしている」としています。
実際、『途上』を含む作品が日本の探偵小説に与えた影響は大きいです。
⑨江戸川乱歩『Ⅾ坂の殺人事件』
『D坂の殺人事件』は、1925年に雑誌『新青年』で連載された江戸川乱歩の短編小説です。心理学と犯罪の関係が描かれています。明智小五郎シリーズの代表作です。
D坂とは、東京の文京区にある団子坂のことです。執筆当時、乱歩が団子坂付近に住んでいたため、モデルになりました。
LGBT系作品
⑩谷崎潤一郎『卍』
『卍』は、1928年~1930年に雑誌『改造』(1928年3月号~1929年4月号・6月号~10月号・12月号、1930年1月号・4月号)で連載された谷崎潤一郎の長編小説です。
昭和初期の大阪を舞台に、2組の男女の交錯する関係が描かれています。1964年から5回にわたって映画化されています。
⑪堀辰雄『燃ゆる頬』
『燃ゆる頬』は、1932年に雑誌『文藝春秋』(1月号)で発表された堀辰雄の短編小説です。青年同士の淡い恋愛が描かれています。堀辰雄自身が、高校時代に寄宿舎で生活していた経験が題材になっています。
悪女系作品
⑫泉鏡花『高野聖』
『高野聖』は、1900年に文芸雑誌『新小説』(第5年第3巻)で発表された泉鏡花の短編小説です。高野山の僧が体験した、妖艶な美女との超現実的で摩訶不思議な話が語られています。
鏡花の出世作で、幻想小説(幽霊や悪魔などの超自然の世界を描いた文学)の名作とされています。中国の小説や、鏡花の友人の体験談が元になっています。妖艶な淑女が登場します。
⑬田山花袋『蒲団』
『蒲団』は、1907年に文芸雑誌『新小説』(9月号)で発表された田山花袋の中編小説です。露骨な性を書いたことで、当時の文壇に大きな反響を巻き起こしました。
赤裸々な告白がなされる作品であるため、私小説の出発点と評される作品です。主人公を惑わす少女・芳子のモデルは、花袋の弟子だった岡田美知代という女性です。2016年に映画化されています。清楚系の少女が登場します。
⑭谷崎潤一郎『痴人の愛』
『痴人の愛』は、1924年に「大阪毎日新聞」(3月20日~6月14日)に連載され、一時連載を中断してから雑誌『女性』(1924年11月号~1925年7月号)に連載された谷崎潤一郎の長編小説です。
1人のサラリーマンが15歳の少女を自分好みに育てていくうちに、少女に憑りつかれて破滅するまでが描かれています。1949年から3回に渡って映画化されています。女王様気質の強気な少女が登場します。
⑮室生犀星『蜜のあわれ』
『蜜のあわれ』は、1959年に文芸雑誌『新潮』(1月号~4月号)で連載された室生犀星の中編小説です。作家と金魚の恋が描かれています。刊行された当時は、全文が会話であることの斬新さが評価されました。
同時に、「女の妖(あや)しさが男性側からしか描かれていない」「金魚かつ少女という設定が不安定」という批判的な意見もありましたが、現在は犀星作品を代表する小説として位置づけられています。
2016年には、二階堂ふみさん主演で映画化されました。可憐な小悪魔少女が登場する作品です。
⑯江戸川乱歩『黒蜥蜴』
『黒蜥蜴』は、1934年に雑誌『日の出』(1月号~12月号)で連載された江戸川乱歩の中編小説です。
美人盗賊・黒蜥蜴と、乱歩作品おなじみの明智小五郎の対決が描かれています。三島由紀夫の戯曲(脚本)を元に、2回映画化されています。ドラマは、原作に脚色が加えられたものが多いです。男装の麗人が登場する作品です。
果物系作品
⑰芥川龍之介『蜜柑』
『蜜柑』は、1919年に文芸雑誌『新潮』で発表された芥川龍之介の短編小説です。横須賀駅から汽車に乗った私が、故郷から奉公に行く娘と過ごすひと時が描かれています。芥川の実体験がもとになっています。
⑱梶井基次郎『檸檬』
『檸檬』は、1925年に文芸雑誌『青空』(創刊号)で発表された梶井基次郎の短編小説です。憂鬱な気分が、1個の檸檬と出会うことで生き生きとしたものに生まれ変わる過程が描かれています。梶井の高校時代の経験が元になっています。
⑲太宰治『桜桃』
『桜桃』は、1948年に雑誌『世界』で発表された太宰治の短編小説です。家庭を持つことに重荷を感じ、家庭から逃げようとする男の様子が描かれています。「子供より親が大事と思いたい」という一文が印象的です。
太宰は、1948年6月13日に愛人と自殺し、遺体は太宰の誕生日である6月19日に発見されました。太宰が死の直前に書いた作品が『桜桃』であったため、6月19日は「桜桃忌」と名付けられました。
猫系作品
⑳夏目漱石『吾輩は猫である』
『吾輩は猫である』は、1905年に俳句雑誌『ホトトギス』(1・2・4・6・7・10月、翌年1・3・4・8月)で連載された夏目漱石の長編小説です。
漱石が38歳のときに執筆した処女作で、猫目線から人間を描くという斬新な作品です。漱石の家に住み着いた、野良の黒猫がモデルと言われています。
㉑宮沢賢治『猫の事務所』
『猫の事務所』は、1926年に文芸雑誌『月曜』(3月号)で発表された宮沢賢治の童話です。猫の事務所でのいじめが描かれています。
賢治が生前に発表した、数少ない作品のうちの1つです。1996年には「賢治のトランク」というオムニバス映画で映像化されています。
桜の季節に読みたい作品
㉒樋口一葉『闇桜』
『闇桜』は、1892年に雑誌『武蔵野』(第一編)で発表された樋口一葉の短編小説です。兄妹のように育った男女が、あることをきっかけに意識し出してしまう様子が描かれています。
「萩の舎(はぎのや)」というところで和歌の勉強をしていた一葉は、朝日新聞専属作家の半井桃水(なからい とうすい)の指導を受け、『闇桜』を執筆しました。古典の要素が盛り込まれた作品です。
㉓梶井基次郎『桜の樹の下には』
『桜の樹の下には』は、1928年に文芸雑誌『詩と詩論』(第二冊)で発表された梶井基次郎の短編小説です。桜や生命と、死を結びつける斬新な内容となっています。
話者の「俺」が聞き手に語りかける形式で展開しています。「桜の樹の下には屍体が埋まつている!」という冒頭文が有名です。
㉔坂口安吾『桜の森の満開の下』
『桜の森の満開の下』は、1947年に雑誌『肉体』で発表された坂口安吾の短編小説です。幻想的な世界を舞台に、峠の山賊と美しくも残酷な女が描かれています。坂口安吾の代表作で、1975年に映画化されて3度に渡って漫画化されています。
㉕太宰治『葉桜と魔笛』
『葉桜と魔笛』は、1939年に文芸雑誌『若草』(6月号)で発表された太宰治の短編小説です。20歳だった老夫人と、死期の近い妹の交流が描かれています。老夫人が、35年前の出来事を語る形式で展開されます。
夏の盛りに読みたい作品
㉖太宰治『満願』
『満願』は、1938年に雑誌『文筆』で発表された太宰治の短編小説です。原稿用紙数枚の非常に短い作品です。夏の伊豆を舞台に、主人公が見た女性の清廉さが描かれています。人間の本能が、爽やかに表現されている小説です。
㉗宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
『銀河鉄道の夜』は、1924年頃から書き始められ、賢治の死後に全集に収められた作品です。貧乏な少年が、友人と不思議な銀河旅行をする物語です。何度も推敲が行われました。
涼しくなったころに読みたい作品
㉘樋口一葉『十三夜』
『十三夜』は、1895年に文芸雑誌『文芸倶楽部』(閨秀小説号)で発表された樋口一葉の短編小説です。家族を捨てて帰省した女性が、再び嫁ぎ先に戻るまでが描かれています。
十三夜は9月13日のことで、秋口の夜が舞台となっています。1953年に、『大つごもり』『にごりえ』とともにオムニバス映画として映像化されました。
㉙宮沢賢治『風の又三郎』
『風の又三郎』は、宮沢賢治が亡くなった翌年の1934年に発表された童話です。田舎の小学校にやって来た不思議な少年に対する、地元の子供たちの親しみと恐れが混じった気持ちが描かれています。
賢治は、初めはタイトルを『風野又三郎』と表記しましたが、作中では「風の又三郎」と書かれているため、のちに編集者によって『風の又三郎』と改められました。1940年から5回に渡って映画化されています。
年末に読みたい作品
㉚樋口一葉『大つごもり』
『大つごもり』は、1894年に文芸雑誌『文学界』(第24号)で発表された樋口一葉の短編小説です。貧しい少女が経験した、大みそかの奇跡が描かれています。極貧生活を送っていた一葉の経験が元になっています。
㉛太宰治『ヴィヨンの妻』
『ヴィヨンの妻』は、1947年に文芸雑誌『展望』(3月号)で発表された太宰治の短編小説です。クリスマスの前々夜に盗みを犯した奔放な夫を、妻のさっちゃんが支える様子が描かれています。
さっちゃんのモデルは、太宰の正妻である津島美和子という女性です。2人の子供を育て、3人目を身ごもりながら過程を守った人物です。
最後に
今回は、Kindleで無料で読めるおすすめの純文学作品を31作品ご紹介しました。
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