純文学の書評

【宮沢賢治】『風の又三郎』のあらすじ・内容解説・感想|朗読音声付き

『風の又三郎』は、「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ」という冒頭が有名です。NHKの「にほんごであそぼ」でも放映されていたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

今回は、宮沢賢治『風の又三郎』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『風の又三郎』の作品概要

著者宮沢賢治(みやざわ けんじ)
発表年1934年
発表形態不明
ジャンル童話
テーマ不思議な出来事

『風の又三郎』は、宮沢賢治が亡くなった翌年の1934年に発表された童話です。田舎の小学校にやって来た不思議な少年に対する、地元の子供たちの親しみと恐れが混じった気持ちが描かれています。

賢治は、初めはタイトルを『風野又三郎』と表記しましたが、作中では「風の又三郎」と書かれているため、のちに編集者によって『風の又三郎』と改められました。1940年から5回に渡って映画化されています。Kindle版は無料¥0で読むことができます。

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『風の又三郎』の文庫は、新潮社から出版されています。『やまなし』『二十六夜』『祭の晩』『グスコーブドリの伝記』など、代表作からマイナー作品を含めて16篇が収録されています。

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『風の又三郎』の絵本は、やぎたみこさんに手掛けられています。淡い色合いが素敵な1冊です。

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宮沢賢治の童話集は、角川書店から出版されています。『祭の晩』『北守将軍と三人兄弟の医者』『貝の火』『虔十公園林』が収録されています。

著者:宮沢賢治について

  • 仏教と農民生活に主軸を置いて創作活動にはげんだ
  • 宗派の違いで父親と対立
  • 理想郷・イーハトーブを創造
  • 妹のトシと仲が良かった

宮沢賢治は熱心な仏教徒で、さらに農業に従事した人物です。宗派の違いで父親と対立し、なかなか和解には至りませんでした。故郷の岩手県をモデルにした理想郷・イーハトーブを想像で創り上げ作品に登場させました。

妹のトシは賢治の良き理解者で、トシが亡くなったときのことを書いた『永訣(えいけつ)の朝』は有名です。

賢治は、コスモポリタニズム(理性を持っている人間はみな平等という思想)の持ち主であるため、作品にもその色が出ています。生前はほとんど注目されず、死後に作品が評価されました。

『風の又三郎』のあらすじ

夏休みが明けた9月1日、谷川の岸にある小さな小学校に転校生がやって来ました。高田三郎というその転校生は、見た目や話し方が独特な少年でした。5年生の嘉助は、三郎の正体は風の又三郎(風の神様の子)だと思います。

週末、三郎と嘉助、他の生徒は高原に遊びに行きます。逃げ出した馬を追った嘉助はそこで三郎がガラスのマントと靴を身につけて飛ぶ幻影を見るのでした。嘉助はますます驚きます。

登場人物紹介

三郎(さぶろう)

都会から田舎の小学校に転校してきた謎の少年。心優しい性格。

嘉助(かすけ)

小学5年生。三郎が「風の又三郎」だと信じて疑わない。

一郎(いちろう)

小学校のただ1人の6年生。嘉助のいとこ。

『風の又三郎』の内容

この先、宮沢賢治『風の又三郎』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

異物を嫌う人間

転校生

夏休みが明けた9月1日、東北の村の小学校に1人の転校生がやって来ました。転校生は高田三郎と言い、熟したりんごのように赤い顔で、まん丸で真っ黒な目をした少年でした。三郎は標準語を話すので、他の生徒たちと上手く話せません。

強い風とともに教室に入ってきた転校生を見た嘉助は、「風の又三郎じゃないか」と言いました。

「風の又三郎」とは、地元で伝説となっている風の神の子で、悪霊に近い存在として知られていました。三郎は、皆に「おはよう」とあいさつします。しかし、この学校では先生以外に「おはよう」という習慣がないので、皆は戸惑ってしまいました。

三郎が運動場を歩くと、風がざあっと吹きます。すると、嘉助は「やっぱり三郎は風の又三郎だ」言いました。

子供たちと三郎

9月4日、嘉助は6年生の一郎や又三郎と高原に遊びに行きました。嘉助が牧場の柵を開くと、2頭の馬が逃げてしまいます。1頭は一郎が捕まえますが、もう1頭を追った嘉助と三郎は道に迷ってしまいました。

そこは道が悪く、崖から落ちれば命はない危険な場所です。そのとき、とても強い風が吹いて、嘉助は眠ってしまいました。嘉助は、ねずみ色の上着の上にマントを着て、ガラスの靴を履いた三郎の幻を見ました。

 

9月6日、子供たちはで川へ泳ぎに行きました。そこで、彼らは大人が仕掛けたダイナマイト漁に遭遇したり、三郎を捕まえに来た専売局(政府の機関)の人から三郎を守ったりします。

9月8日、子供たちはまた川で遊びます。急に天気が悪くなってきたので鬼ごっこをしていると、誰ともなく、「雨はざっこざっこ雨三郎、風はどっこどっこ又三郎」と歌い出し、他の子供たちもそれに合わせて歌います。

すると、三郎は顔色を変えて川から上がってきて、「いま歌ったのはおまえたちか」と厳しく言いました。

12日目

9月12日、村を台風がおそいました。一郎と嘉助は、三郎との別れを予感して、早めに登校します。

学校に着くと、2人は先生から「三郎は昨日、転校した」と告げられます。それ聞いた嘉助は、「やっぱりあいつは風の又三郎だったな」と叫びました。

『風の又三郎』の解説

三郎と又三郎

三郎と又三郎は、同一人物であるか否かは、意見が分かれています。同一であるとみなすことの方が多いですが、ここでは2人は別人であるとする論をご紹介します。

三郎と又三郎が別人であるという理由は、2つあります。1つ目は、三郎が高原で馬を怖がったことです。風の精の又三郎なら動物を怖がるはずがないのに、三郎は馬を怖がっているため、これは三郎と又三郎が別人であることの証拠になります。

2つ目は、三郎がタバコの葉のことを知らなかったことです。風の精の又三郎は、自然と親和性があるため植物のタバコを知らないことはありませんが、三郎は都会の子であるがゆえにそれを知らなかったのです。

 

この2人の転換には、風が関係しています。「又三郎」という言葉が出てくる時には、必ず風が吹くからです。牧場に行く途中では「樹がざあっと鳴」って風が吹いている様子が分かりますし、嘉助が三郎が飛ぶ幻を見る前にも「非常に強い風が吹いて来」ました。

これらのことから、三郎と又三郎は別人で、2人は風を媒介して入れ替わっている事が分かります。

曲揚「宮沢賢治「風の又三郎」論 : 風野又三郎と高田三郎、二人の三郎の物語」(『緑岡詞林』2016年3月)

『風の又三郎』の感想

排斥の心

「異質なものは排除したくなる」という人間に心理が表れている作品だと感じました。三郎は、容姿や言葉遣い、行動が村の子の感覚とはずれていました。

それでも、子供たちは三郎と仲良くしますが、最終的には村の子達だけで結束して、三郎を仲間外れにしてしまいます。

そうして三郎は転校してしまい、子供たちは2度と三郎と遊べなくなってしまいました。三郎は単なる転校生だったという説や、風の又三郎が化けていたという説、よそ者である三郎に又三郎が憑依していたという説があります。

 

しかし、賢治はそれを明らかにしていないので、三郎の正体は「読者の想像にお任せ」と言うことになります。

私は、又三郎は普通の小学生に化けていたのではないかと思います。髪が赤かったり、服装が変だったり、三郎はどこか異質な雰囲気があるからです。

『風の又三郎』の朗読音声

『風の又三郎』の朗読音声は、YouTubeで聴くことができます。

最後に

今回は、宮沢賢治『風の又三郎』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

賢治の代表作なので、ぜひ読んでみて下さい!

↑Kindle版は無料¥0で読むことができます。

ABOUT ME
yuka
yuka
本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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