純文学の雑誌の代表は、「文學界」「新潮」「群像」「すばる」「文藝」の五誌です。いずれも多くの作家を生み出した、現代日本文学の中心的な存在となっている雑誌です。
内容は、作家の連載や読み切りの作品の掲載、作家へのインタビューや対談など多岐に渡ります。これらに掲載された短編・中編が芥川賞の候補になることが多いです。
今回は、「文芸誌を読んでみたいけど、どれが良いか分からない」「種類がたくさんあって選べない」という方向けに、五大文芸誌の違いと特徴をご紹介します!
Contents
評価について
おすすめランキングを付けるにあたり、定価・発行部数・芥川賞受賞作品数(参考:直木賞 芥川賞受賞作一覧)の3項目で比較をしました。
定価は「買いやすい」という観点から、安いものから順に5点~1点、発行部数・芥川賞受賞作品は多いものから順に5点~1点というように点数をつけ、合計点の多い順に1位~5位のランク付けを行いました。
※データは、すべて2020年11月現在公表されているものを参考にしています。
五大文芸誌おすすめランキング
上記の基準に沿って文芸誌を評価し、おすすめ順にご紹介します。
1位:文學界(ぶんがくかい)
定価 | 990円 |
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発売日 | 毎月7日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1933年 |
部数 | 10,000部 |
判型 | ‐ |
出版社 | 文藝春秋 |
主催する賞 | 文學界新人賞 |
芥川賞受賞作品数 | 63作品 |
「文學界」は、文藝春秋が出版する純文学界を代表する文芸誌です。小説だけでなく、エッセイ・戯曲・音楽・評論とバラエティに富んだ誌面構成で、読みごたえがあります。不定期に組まれる特集も要チェックです。
芥川賞受賞作品数は、63作品と五誌の中で最多。受賞作品数2位の「新潮」の30作品に、圧倒的な差をつけています。
読んだことのある作品が芥川賞に選ばれることは嬉しいですし、どれが受賞するのか予想するのも楽しいです。文芸雑誌ビギナーにぜひおすすめしたい雑誌です。
2位:新潮(しんちょう)
定価 | 1,100円 |
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発売日 | 毎月7日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1904年5月 |
部数 | 6,340部 |
判型 | A5版 |
出版社 | 新潮社 |
主催する賞 | 新潮新人賞 |
芥川賞受賞作品数 | 30作品 |
「新潮」は、新潮社が出版する1904年5月創刊の文芸雑誌です。さまざまなアーティストからの寄稿も受けており、幅広い作家の作品が掲載されます。
「新潮」に掲載されて芥川賞を受賞した作品は、石井遊佳『百年泥』、町屋良平『1R(ラウンド)1分34秒』、高山羽根子『首里の馬』など。
2位:群像(ぐんぞう)
定価 | 980円 |
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発売日 | 毎月7日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1946年10月 |
部数 | 6,250部 |
判型 | A5判 無線とじ |
出版社 | 講談社 |
主催する賞 | 群像新人文学賞 |
芥川賞受賞作品数 | 22作品 |
「群像」は、講談社で最も歴史のある文芸雑誌です。主催する群像新人文学賞には、小説部門だけではなく評論部門も設置。書くプロのみならず、読むプロの発掘にも貢献しています。
小説部門では、W村上(村上龍、村上春樹)など著名な作家を輩出。講談社が主催する文学賞・「野間文芸賞」「野間文芸新人賞」の受賞発表は、この「群像」の紙面上で行われます。
4位:すばる
定価 | 970円 |
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発売日 | 毎月6日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1970年5月 |
部数 | 5,000部 |
判型 | A5判 |
出版社 | 集英社 |
主催する賞 | すばる文学賞 |
芥川賞受賞作品数 | 4作品 |
「すばる」は、集英社が出版する文芸雑誌です。発行部数の56%が関東で販売されているため、関東ではかなりメジャーな雑誌と言えます。気鋭の若手から人気作家まで、幅広い作家の作品をそろえているのが特徴。
『すばる』に掲載されて芥川賞を受賞した作品は、三木卓(みき たく)の『鶸(まひわ)』、金原ひとみの『蛇にピアス』、田中慎弥の『共喰い』、古川真人『背高泡立草(せいたかあわだちそう)』の4作品。
購読者の39%を20代が占めており、若い世代から支持されています。小説以外にも、評論や翻訳、映画、美術などをテーマにした特集が不定期で掲載され、さまざまな知見を得られる雑誌です。
5位:文藝(ぶんげい)
定価 | 1,485円 |
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発売日 | 1月、4月、7月、10月の7日 |
刊行形態 | 季刊 |
創刊 | 1933年 |
部数 | ‐ |
判型 | A5判 |
出版社 | 河出書房新社 |
主催する賞 | 文藝賞 |
芥川賞受賞作品数 | 10作品 |
「文藝」は、河出書房新社が出版する文芸雑誌です。「文学の『いま』を伝える」というコンセプトを掲げていることもあり、文芸シーンに新たな風を吹き込む作家を輩出しています。
ほかの雑誌に比べると若干価格が高いように感じられますが、「文藝」は季刊なので年に4回しか発行されません。
月刊の雑誌がだいたい1,000円くらいだとすると、購読した場合1年で12,000円かかりますが、「文藝」は1年で約6,000円です。その意味でコスパは五誌の中でダントツ1位なので、「文芸誌を読みたいけど出費は抑えたい!」という人にぴったり。
「文藝」に掲載されて芥川賞を受賞した作品は、芥川賞受賞受賞の最年少記録を持つ綿矢りさの『インストール』、 若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』、遠野遥『破局』など。
自由で一風変わった作品が取り上げられることが多いので、堅い作品よりも目新しいものが好きな人におすすめです。
番外編
五大文芸誌は純文学の雑誌であり、掲載されている小説は芥川賞系の「堅い」小説です。一方で、直木賞系のエンターテイメント小説(大衆小説)を掲載する雑誌もあります。
純文学系の雑誌と大衆小説系の雑誌を、それぞれ刊行している出版社はいくつかあります。例えば、文藝春秋の純文学部門は「文學界」が、大衆小説部門は「オール讀物」が担っています。
ここでは、番外編として直木賞系の小説の雑誌を紹介します。
オール讀物(オールよみもの)
定価 | 1,000円 |
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発売日 | 毎月22日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1930年 |
部数 | ‐ |
判型 | ‐ |
出版社 | 文藝春秋 |
主催する賞 | オール讀物新人賞 |
「オール讀物」は、文藝春秋発行のエンターテイメント小説雑誌です。水彩画のように淡いタッチで、素朴でのどかな風景を描いた表紙が特徴。
時代小説とミステリーが多く掲載されるため、これらのジャンルが好きな方におすすめです。
小説現代
定価 | 1,000円 |
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発売日 | 毎月22日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1962年 |
部数 | ‐ |
判型 | A5判 無線綴じ |
出版社 | 講談社 |
主催する賞 | 小説現代長編新人賞 |
「小説現代」は、講談社が発行するエンターテイメント小説です。2018年9月から休刊し、2020年の2月にリニューアル復刊しました。それまでの表紙はイラストメインでしたが、リニューアル後は画像や著名人を起用するようになったという印象があります。
長編一挙掲載を中心に、読み切りやエッセイ、コラムなどボリューム満点です。長編の連載は先の展開がどうなるのか待ち遠しかったり、間が空いて前の号の内容を忘れてしまったりしますが、一挙掲載なのでその心配はなさそうですね。
五木寛之・伊集院静・朝井まかてなど、数多くのベストセラー作家を輩出しています。
小説新潮
定価 | 1,000円 |
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発売日 | 毎月22日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1947年 |
部数 | 8,717部 |
判型 | A5判 |
出版社 | 新潮社 |
主催する賞 | ‐ |
「小説新潮」は、新潮社が発行している大衆小説雑誌です。エンターテインメントを筆頭に、ファンタジーやミステリーなどジャンルを問わず様々な小説を扱っています。
小説すばる
定価 | 960円 |
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発売日 | 毎月17日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 1987年11月 |
部数 | 9,000部 |
判型 | A5判 |
出版社 | 集英社 |
主催する賞 | 小説すばる新人賞 |
「小説すばる」は、集英社が発行するエンターテイメント小説雑誌です。若手から実力派まで、人気作家の新作が刑されているところがポイント。エッセイ・漫画・書評なども充実した、盛りだくさんの内容となっています。
主催する小説すばる新人賞は、村山由佳、荻原浩、熊谷達也、朝井リョウなど多数の直木賞作家を輩出しました。
読者のボリュームが多いところを抜粋すると、20代が25%、30代が28%、60代が20%となっており、若い世代を中心に幅広い年代から支持されていることがうかがえます。
小説 野性時代
定価 | 860円 |
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発売日 | 毎月12日 |
刊行形態 | 月刊 |
創刊 | 2003年11月 |
部数 | 20,000部 |
判型 | A5判 |
出版社 | KADOKAWA |
主催する賞 | ‐ |
KADOKAWAが発行する、2003年創刊の比較的新しい雑誌です。アイドルや俳優の画像を大胆に使用した、一見ファッション雑誌のような表紙が印象的です。
2014年には、黒川博行『破門』が直木賞を受賞しました。話題作を発信し続け、角川書店の伝統を担う小説誌と言えます。
読者の男女比は5:5で、特に偏りはなくバランスの良い内容となっています。読者の平均年齢は40歳と比較的高め。
定価は860円で他の雑誌に比べてリーズナブルなので、気になった方はぜひ手に取ってみて下さい!
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最後に
今回は、五大文芸誌の違いと特徴をご紹介しました。以下に比較表をまとめました。
定価 | 発売日 | 創刊 | 部数 | 出版社 | 芥川賞受賞作数 | |
文學界 | 990円 | 毎月7日 | 1933年 | 10,000部 | 文藝春秋 | 63作品 |
新潮 | 1,100円 | 毎月7日 | 1904年 | 6,340部 | 新潮社 | 30作品 |
群像 | 980円 | 毎月7日 | 1946年 | 6,250部 | 講談社 | 22作品 |
すばる | 970円 | 毎月6日 | 1970年 | 5,000部 | 集英社 | 4作品 |
文藝 | 1,485円 | 1,4,7,10月の7日 | 1933年 | ‐ | 河出書房新社 | 10作品 |
数値化できるものだけで比較して順位を付けましたが、各雑誌にはそれ特有の良さがあって優劣を付けられません。
どの雑誌にも個性があり、合う合わないは人それぞれです。本屋さんで目次を見てみて、気になった記事があったものを買うのも良いですし、好きな作家が連載しているものを読むのも良いでしょう。ぜひ自分に合った雑誌を見つけてみて下さい!