純文学の基礎知識

W受賞はあり?芥川賞と直木賞の4つの違い

芥川賞や直木賞の授賞式の時期になると、毎回受賞者が話題になります。一応ニュースになっているから誰が受賞したか把握はしているけど、そもそも芥川賞と直木賞は何が違うの?と疑問に思ったことがある方は多いと思います。

また、マンガ『響~小説家になる方法~』には、現役女子高生が芥川賞と直木賞を同時に受賞するというモチーフが用いられています。

ネットでは、「高校生が実際にそんな快挙を成し遂げられるのか?」という議論が飛びかっていました。違いを明確にしながら、その疑問にも答えたいと思います。

今回は、芥川賞と直木賞の4つの違いを詳しく解説します!

芥川賞とは?


[出典:日本文学振興会]

正式名称は、「芥川龍之介賞」です。文藝春秋の創設者の菊池寛(きくちかん)が、友人の芥川龍之介の自社への貢献を称えて、直木賞と同時に設立しました。純文学作品の中から最優秀作品に贈られる賞です。

基本的には1作品が選ばれますが、2作品が選ばれることも、そもそも受賞作品がないこともあります。選考のスケジュールは、上半期と下半期に分かれます。

上半期は12月~翌年5月までに出された作品が選考され、7月に受賞作品が発表、9月に文藝春秋に掲載されます。下半期は6月~11月まで出された作品が選考され、翌年1月に発表、3月に文藝春秋に掲載されます。これは直木賞と同時進行で行われます。

現在の選考委員は小川洋子さん、山田詠美さんなど計7名です。

直木賞とは?


[出典:日本文学振興会]

正式名称は、「直木三十五(なおきさんじゅうご)賞」です。文藝春秋の創設者の菊池寛が、友人の直木三十五の自社への貢献を称えて、芥川賞と同時に設立しました。

このユニークなペンネームは、彼の年齢から来ています。直木三十一、三十二、三十三と毎年ペンネームを変えていたのですが、菊池寛に「いいかげんやめなさい」と忠告されて三十五で止めたという話が残っています。

 

小説家としてだけではなく、脚本家や映画監督としても活躍した人物です。職業を見てみると、エンターテインメントの方面で力を発揮した人なのだと分かります。

そんな直木三十五の名を記念した直木賞は、大衆文学作品のうち最も優れた作品に贈られる賞です。直木賞の場合、賞を取った作品はオール読物という文芸雑誌に掲載されます。現在の選考委員は東野圭吾さん、宮部みゆきさんなど計9名です。

芥川賞と直木賞の4つの違い

「ジャンル」「原稿量」「選考対象になる形式」「受賞作家の年齢」が挙げられます。以下で一つずつ説明します。

違い① ジャンル

芥川賞には純文学作品が選ばれて、直木賞には大衆文学作品が選ばれます。純文学は芸術性を重視したもので、夏目漱石や太宰治が代表的な作家に挙げられます。俗に言う「なんか難しそうな本」です。

反対に大衆文学はエンターテインメント性を重視したもので、映画やドラマの原作になっている作品が多いです。そのため、より身近で手に取りやすいジャンルだと言えます。純文学と大衆文学の違いについては、以下の記事をご覧ください。

徹底比較でギモンを解消!大衆文学と純文学の違い皆さんは、「大衆文学と純文学の違いを説明して」と言われたとき、どのように答えますか?おそらく「大衆文学は読みやすくて、純文学は難しい」と...

違い② 選考対象になる形式

芥川賞・直木賞ともに、公募でのエントリーはできません。すでに世の中に発表された作品の中から、文藝春秋の社員が数十人で上半期・下半期ごとに候補を選ぶのです。そこで選ばれるのは5~6作品程度なので、ノミネートされるだけでも名誉のあることです。

芥川賞は、文芸雑誌(文學界・群像・新潮・文藝・すばる・早稲田文学)に発表された作品の中から選ばれます。そのため、芥川賞を受賞するためには各誌が実施する新人賞で結果を残すことが必須条件です。

直木賞は、単行本(ハードカバーの本)として刊行されている作品であれば対象になります。

違い③ 原稿量

芥川賞は中編・短編作品が対象で、直木賞は長編・短編集が対象です。

短編は一般的に原稿用紙10枚~80枚(4000字~3万2000字)、中編は原稿用紙100枚~300枚(4万~12万字)、長編はそれ以上と定義されています。

短編は読者が手を伸ばしやすく、製本料が安く済むので、売り上げが伸びやすい傾向があります。そのため、直木賞受賞作品より芥川賞受賞作のほうが比較的売れやすいと言えるでしょう。

違い④ 受賞作家の年齢

芥川賞は新人作家によって書かれたものが、直木賞は新人作家や中堅作家によって書かれたものが対象です。ですが直木賞は現在若手の受賞が難しく、経験のある中堅作家が選ばれる傾向があります。

以下の表は、受賞者全体に対するの年齢ごとの分布をまとめたものです。

芥川賞直木賞
10代0.5%該当なし
20代15%2%
30代54%32%
40代23%42%
50代4%17%
60代1%5%
70代0.5%該当なし

[出典:直木賞のすべて][出典:芥川賞のすべて]より作成。

こうみると、芥川賞は20代・30代の比較的若い世代がが全体の7割を占めていて、直木賞は30代・40代が中心であることが分かります。

大衆文学は作家も作品数も多いため、力のない若手は埋もれてしまうのでしょうか。そもそも、新人が中堅層と互角に戦うのが難しいということも考えられます。

以上のことから、芥川賞は若手作家がメインで新人の登竜門で、直木賞は中堅作家が評価される場だと言えます。ちなみに、芥川賞最年少記録は綿矢りささんの19歳で、直木賞は堤千代さんの22歳です。

最後に

「芥川賞と直木賞の4つの違い」を解説しました。以下の表がまとめです。

芥川賞直木賞
ジャンル純文学大衆文学
対象になる形式文芸雑誌単行本
原稿量中編・短編長編・短編集
受賞者の年齢若年層ミドル層

「高校生が芥川賞と直木賞をW受賞することは可能か?」と冒頭の疑問に戻ります。答えは、「できない」です。高校生だからという以前に、芥川賞と直木賞は性質が全く違うからです。芥川賞は純文学を、直木賞は大衆文学を扱うと違い①で述べました。

W受賞をするということは、野球選手がサッカー選手を兼任するのと同じことです。それは不可能に近いことです。また、上では触れませんでしたが、実はW受賞を避ける仕組みがあります。

それは、もし仮に両方の賞にノミネートされたとき、どちらかの賞で受賞が決まった場合は、もうひとつの賞の候補からは外れるというものです。このように、W受賞は実現しない仕組みが出来上がっています。

 

余談ですが、芥川賞と直木賞の選考は、1961年から日本三大料亭のうちの一つ・築地の「新喜楽」で行われています。そこには、芥川賞の選考は1階で直木賞は2階というルールがあるそうです。

また、料亭というのが粋だと思います。数々の文豪が実際に足を運んだ料亭という場所で、次のシーンを担う作家の発掘・評価をするというのは非常に興味深いです。

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yuka
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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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