Kindleには無料で読める純文学作品もありますが、有料でもぜひ読みたい作品がたくさんあります。新進気鋭の新人作家や、解説・あとがき付きの書籍がそろっているからです。そこで、今回は有料だけどおすすめの作品を作家別にまとめました。
また、KindleはKindleアプリ(無料)を利用すればスマホ・PC・タブレットなどの端末で読むことが可能です。Kindleで無料で読める純文学作品は、以下の記事をご参照ください。
それでは早速、Kindleで読める有料だけどおすすめの純文学作品を30篇をご紹介します。
Contents
江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
①『屋根裏の散歩者』
『屋根裏の散歩者』は、1925年に雑誌『新青年』(8月号)で発表された江戸川乱歩の短編小説です。犯罪に興味を持った男が実際に殺人を犯すまでが、男の目線から描かれています。
1970年から5回にわたって映画化され、2016年にはNHK BSプレミアムでドラマ化もされました。女性が明智を演じたということで、話題になりました。
②『芋虫』
『芋虫』は、1929年に雑誌『新青年』で発表された江戸川乱歩の短編小説です。戦地で大けがを負った元軍人と、彼を世話する妻の残酷な生活が描かれています。
乱歩のグロテスク趣味が色濃く出ている作品です。発表された当時はプロレタリア文学が盛んだったため、反戦小説として読まれることもありましたが、あくまで乱歩は「苦痛と快楽と惨劇を書きたかった」と言っています。
『少女椿』の丸尾末広によって漫画化され、2005年のオムニバス映画「乱歩地獄」で映画化されています。
川端康成(かわばた やすなり)
③『伊豆の踊子』
『伊豆の踊子』は、1926年に文芸雑誌『文藝時代』(1月号)で発表された川端康成の短編小説です。孤独や憂鬱から逃れるために旅に出た青年が、旅先で踊子の少女に恋心を抱く様子が描かれています。1933年から6回に渡って映画化されています。
④『雪国』
『雪国』は、1935年~1947年に雑誌『文藝春秋』『改造』など計11誌で断続的に連載された川端康成の長編小説です。新潟県湯沢町を舞台に、そこで生きる女性やはかない命などが描かれています。1957年と1965年に映画化されました。
村上春樹(むらかみ はるき)
⑤『風の歌を聴け』
『風の歌を聴け』は、1979年に文芸雑誌『群像』(6月号)で発表された村上春樹の長編小説です。1970年に、主人公が過ごした夏の出来事がつづられています。村上春樹の処女作で、英語をはじめ14か国語に翻訳されています。
⑥『羊をめぐる冒険』
『羊をめぐる冒険』は、1982年に文芸雑誌『群像』(8月号)で発表された村上春樹の長編小説です。主人公が、謎の男に「羊」を探して欲しいという依頼され、「羊」を探す旅に出る物語です。
作中では、「羊」が何を指しているのかは明言されていません。『羊をめぐる冒険』は、発表された1982年に第4回野間(のま)文芸新人賞を受賞しました。
⑦『ノルウェイの森』
『ノルウェイの森』は、1987年に発表された村上春樹による書き下ろしの長編小説です。37歳の主人公が、過去を回想する形式の恋愛小説です。赤と緑のクリスマスカラーが印象的な装丁は、村上さんが自身で手がけました。
国内累計発行部数は1000万部を突破しました。2010年には、松山ケンイチさん・菊地凛子さん・水原希子さん主演で映画化されました。
村上龍(むらかみ りゅう)
⑧『限りなく透明に近いブルー』
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『限りなく透明に近いブルー』は、1976年に文芸雑誌『群像』(6月号)で発表された村上龍の短編小説です。同年に第75回芥川賞を受賞しました。
東京の福生市を舞台に、複数の男女が薬物や暴力で破滅していく様子が描かれています。その内容の過激さゆえ、芥川賞の選考会では賛否が分かれて長時間の議論が行われました。
内容が似通っているため、石原慎太郎『太陽の季節』と比較されることもあります。
⑨『コインロッカー・ベイビーズ』
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『コインロッカー・ベイビーズ』は、1980年に書き下ろされた村上龍の長編小説です。1971年に実際に起こった幼児の置き去り事件が題材となっており、置き去りにされた2人の子供が成長して別々の道を歩む様子が描かれています。
2016年には舞台化されました。村上春樹は、『コインロッカー・ベイビーズ』を読んで長編(『羊をめぐる冒険』)を書こうと決意したそうで、その影響力は大きいです。
川上弘美(かわかみ ひろみ)
⑩『真鶴』
『真鶴(まなづる)』は、2006年に刊行された川上弘美の長編小説です。「真鶴」というタイトルの日記を残して失踪した夫を忘れるように、主人公は新しい恋人との逢瀬を重ねますが、なぜか真鶴に惹かれてしまう主人公の様子が描かれています。
『真鶴』は、2007年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。
⑪『水声』
『水声(すいせい)』は、2013年1月号~2014年4月号に文芸雑誌『文學界』で連載された川上弘美の長編小説です。「ママ」を失った姉弟が、2人暮らしをする中で家族の謎に迫る物語です。
「水声」は、「水や川が流れる音」と言う意味です。本作は第66回読売文学賞の小説賞を受賞しました。
小川洋子(おがわ ようこ)
⑫『妊娠カレンダー』
『妊娠カレンダー』は、1990年に文芸雑誌『文學界』(9月号)で発表された小川洋子の短編小説です。同年に第104回芥川賞を受賞しました。
大学生の妹目線で、妊娠した姉の様子が語られています。淡々と日々の出来事が語られていく中で、妊娠の非日常性が浮かび上がってくる作品です。2005年には、アメリカの雑誌に掲載されました。
⑬『博士の愛した数式』
『博士の愛した数式』は、2003年に文芸雑誌『新潮』(7月号)で発表された小川洋子の長編小説です。交通事故によって記憶が80分しか持続しなくなった元数学者と、そこに新しく派遣された家政婦と息子の「ルート」の暖かな触れ合いが描かれています。
数学用語も出てきますが、博士が家政婦の「私」とルートにも分かるように優しく教えてくれるので、数学の魅力に気づける作品です。2006年には映画化されました。
吉本ばなな(よしもと ばなな)
⑭『キッチン』
『キッチン』は、1987年に文芸雑誌『海燕(かいえん)』(11月号)で発表された吉本ばななの短編小説です。吉本ばななが商業誌デビューした作品で、吉本ばななは『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しました。
祖母を無くして天涯孤独となった主人公が、知人の家での奇妙な生活を通して死を乗り越える様子が描かれています。1988年には、『キッチン』の続編となる『満月 キッチン2』が発表されました。
⑮『TUGUMI』
『TUGUMI』は、1988年4月号~1989年3月号に雑誌『マリ・クレール』で連載された吉本ばななの中編小説です。吉本ばななの初期の作品で、1989年に山本周五郎賞を受賞しました。
海辺の町を舞台に、病弱な少女とその従姉妹らの交流が描かれています。平成初のミリオンセラーを記録し、英訳されて海外からも高い評価を得ている作品です。
川上未映子(かわかみ みえこ)
⑯『乳と卵』
『乳と卵(ちちとらん)』は、2017年に文芸雑誌『文學界』(12月号)で発表された川上未映子の中編小説です。2008年に芥川賞を受賞しました。自身の豊胸に夢中な母親と、反抗期で情緒不安定な娘の葛藤が描かれています。
⑰『ヘヴン』
『ヘヴン』は、2009年に文芸雑誌『群像』(8月号)で発表された川上未映子の長編小説です。作者初の長編小説。いじめの標的とされている男女の交流を軸に、善悪とは何かを考えさせる作品です。2010年に芸術選奨新人賞、紫式部文学賞を受賞しました。
村田沙耶香(むらた さやか)
⑱『コンビニ人間』
『コンビニ人間』は、2016年に文芸雑誌『文學界』(6月号)で発表された村田沙耶香の短編小説です。36歳未婚の主人公が、コンビニのアルバイトとして生きる様子が描かれています。
「普通とは何か」を問いかける作品です。作者がコンビニでアルバイトをしていた経験が元になっています。
⑲『タダイマトビラ』
『タダイマトビラ』は、2016年に発表された村田沙耶香による書き下ろしの中編小説です。母親から十分な愛情を注がれなかった少女が、「おかえり」の声を求めて自分探しをする、「家族」がテーマの物語です。
⑳『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は、2020年2月に発表された村田沙耶香による書き下ろしの短編小説です。
OLの主人公が、降りかかってくる無理難題を魔法のコンパクトを駆使して乗り切っていく物語です。タイトルも内容も振り切ったものになっていて、話題になりました。
又吉直樹(またよし なおき)
㉑『火花』
『火花』は、2015年に文芸雑誌『文學界』(2月号)で発表された又吉直樹の中編小説です。主人公が、「師匠」とともにお笑い芸人として生きる様子が描かれています。
主人公が師匠として慕った神谷のモデルは、「烏龍パーク」というコンビの橋本武志(はしもと たけし)さんです。2016年には林遣都さん主演でドラマ化されました。
㉒『劇場』
『劇場』は、2017年に文芸雑誌『新潮』(4月号)で発表された又吉直樹の長編小説です。夢を追う若い劇作家が、東京で挫折していく様子が描かれています。
登場人物に特定のモデルはおらず、又吉さんは周りにいる色々な人のことを思いながら、人物造形をしたそうです。山崎賢人さんと松岡茉優さんが主演を務める映画は、2020年4月以降に公開予定です。
金原ひとみ(かねはら ひとみ)
㉓『蛇にピアス』
2003年に第27回すばる文学賞を受賞した金原ひとみの短編小説です。同棲相手の影響で、ピアスや刺青、スプリットタン(舌を割くこと)といった肉体改造に目覚めた主人公が、同棲相手の失踪等で不安に駆られる様子が描かれています。
綿矢りさの『蹴りたい背中』とともに第130回芥川龍之介賞を受賞し、2008年には吉高由里子さん主演で映画化されました。
㉔『アッシュベイビー』
『アッシュベイビー』は、2004年に書き下ろされた金原ひとみの中編小説です。小児愛や同性愛が生々しく描かれているため、賛否両論が巻き起こりました。『蛇にピアス』に次ぐ作者の第2作目です。
㉕『クラウドガール』
『クラウドガール』は、2017年に書き下ろされた金原ひとみの長編小説です。リアルを感じる美しい妹と、規律正しく行動する姉が共有する家族の秘密が描かれています。水彩画風の美しい表紙が目を引く1冊です。
綿矢りさ(わたや りさ)
㉖『蹴りたい背中』
『蹴りたい背中』は2003年に文芸雑誌『文藝』(秋季号)で発表された綿矢りさの中編小説です。周囲に溶け込めない高校1年生のハツと、アイドル好きのにな川の交流が描かれています。
芥川賞史上最年少の19歳で、金原ひとみ『蛇にピアス』と同時に芥川賞を受賞しました。19歳が描くフレッシュな青春小説です。
㉗『インストール』
『インストール』は、2001年に発表された綿矢りさの中編小説です。投稿y古碑をしている主人公が、壊れたパソコンを修理した少年との交流を通して少しずつ変わっていく物語です。
当時17歳の作者のデビュー作で、2004年には上戸彩さん主演で映画化されました。
㉘『勝手にふるえてろ』
『勝手にふるえてろ』は、2010年に文芸雑誌『文學界』(8月号)で発表された綿矢りさの長編小説です。
主人公が、初恋の人への片思いを続けるか、言い寄ってくる男性で妥協するかの間で思い悩む物語です。2017年には松岡茉優さん主演で映画化されました。
田中慎也(たなか しんや)
㉙『共喰い』
『共喰い』は、2011年に文芸雑誌『すばる』(10月号)で発表された田中慎也の短編小説です。17歳の主人公が、暴力的な父親と同じ血が流れていることを意識し、自分も恋人に暴力をふるってしまうのではないかという不安を抱く様子が描かれています。
2011年に第146回芥川賞を受賞しました。
上田岳弘(うえだ たかひろ)
㉚『ニムロッド』
『ニムロッド』は、2018年に文芸雑誌『群像』(12月号)で発表された上田岳弘の短編小説です。
システムエンジニアの主人公が、仮装通貨を採掘する仕事をすることを軸に、誰かから必要とされなければ無くなってしまうという不安定な人間像が描かれています。2019年に第160回芥川賞を受賞しました。
最後に
今回は、Kindleで読める有料だけどおすすめの純文学作品を30篇ご紹介しました。
Kindleは、アプリをインストールすればPCからでもスマホからでも読むことができるので、ぜひ利用してみて下さい!