純文学の書評

【吉本ばなな】『TUGUMI』のあらすじ・内容解説・感想|読書感想文のヒント付き

西伊豆が舞台となっている『TUGUMI』は、『Goodbye Tugumi』というタイトルで英訳されるなど、海外でも話題になった小説です。大学入試センター試験の問題にもなっているので、読んだことのある人もいるかもしれません。

今回は、吉本ばなな『TUGUMI』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『TUGUMI』の作品概要

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著者吉本ばなな(よしもと ばなな)
発表年1989年
発表形態雑誌掲載
ジャンル中編小説
テーマ青春

『TUGUMI』は、1988年4月号~1989年3月号に雑誌『マリ・クレール』で連載された吉本ばななの中編小説です。吉本ばななの初期の作品で、1989年に山本周五郎賞を受賞しました。

海辺の町を舞台に、病弱な少女とその従姉妹らの交流が描かれています。平成初のミリオンセラーを記録し、英訳されて海外からも高い評価を得ている作品です。

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『TUGUMI』は、1990年に「つぐみ」というタイトルで映画化されました。伊豆半島の松崎町が舞台となっています。

著者:吉本ばななについて

  • 日本大学 芸術学部 文芸学科卒業
  • 『キッチン』で商業誌デビューを果たす
  • 「死」をテーマとしている
  • 父は批評家・詩人の吉本隆明(よしもと たかあき)

吉本ばななは、日本大学 芸術学部 文芸学科を卒業しており、卒業制作の『ムーンライト・シャドウ』で日大芸術学部長賞を受賞しました。『キッチン』が『海燕(かいえん)』という雑誌に掲載され、吉本ばななは商業誌デビューを果たしました。

吉本ばななが在学中、ゼミを担当していた曾根博義さんは「吉本ばななの小説は、あらゆる点でこれまでの小説の文章の常識を超えている」と評価しています。

作中では「死」が描かれることが多いですが、単に孤独や絶望を描くのではなく、人物がそれを乗り越えようとするエネルギーを持っているところが特徴です。父は批評家で詩人の吉本隆明で、姉は漫画家のハルノ宵子です。

『TUGUMI』のあらすじ

大学生のまりあは、夏休みに故郷の海辺の町に帰ることになりました。そこでまりあは、従姉妹のつぐみや陽子と再会します。つぐみは病弱な体質でしたが、気の強い性格です。

そんなとき、まりあ・つぐみ・陽子は恭一という青年と出会います。つぐみは恭一を気に入り、4人は海辺の町での夏を満喫しました。しかし、楽しいことは長続きせず、つぐみの容体は突然急変してしまいます。

登場人物紹介

まりあ

主人公。つぐみのいとこ兼親友。まりあは、正妻がいる父親が不倫したのちにできた子供であるため、父親の離婚が成立するまで、つぐみの家が経営する旅館に住んでいた。

つぐみ

まりあの1つ年下のいとこ。生まれつき体が弱いが、普通に生活できる程度には丈夫に成長した。意地悪で口が悪く、わがままでずる賢い。

陽子(ようこちゃん)

つぐみの2個上の姉。大人しくて優しく、つぐみとは正反対の性格。

恭一(きょういち)

まりあとつぐみの生まれ育った街に引っ越してきた青年。町 に新しくできた大型ホテルの支配人の息子。

『TUGUMI』の内容

この先、吉本ばなな『TUGUMI』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

故郷の思い出たち

いやな女の子

主人公のまりあは、つぐみの1つ年上のいとこです。つぐみの家は旅館で、まりあと母親はそこに住まわせてもらっていました。

まりあの父親は東京に住んでいて、正妻と離婚してまりあの母親と結婚する準備を進めています。つぐみは生まれつき病弱で、いつ亡くなってもおかしくない状態の子供でした。

 

しかし必死の治療のおかげでなんとか普通に生活できるくらいに成長します。そして両親に尽くされて愛され続けた結果、わがままでひねくれた性格になってしまいました。

まりあは、そんなに性格が悪くてもどこか憎めないつぐみや、その姉で心優しい陽子ちゃんと海辺の町で仲良く育ちました。

恭一との出会い

大学進学を機に、父親のいる東京で暮らすようになったまりあは、つぐみと別れます。東京での生活にも慣れたある日、まりあはつぐみから「旅館をたたんで山でペンションを始めることになった」と連絡をもらいます。

そして、まりあは大学1年の夏休みに、海辺の街での最後の夏を過ごしに行くことになりました。故郷に着いたまりあは、夕暮れ時につぐみとつぐみの家の裏で飼われているポチと散歩に出かけます。

その時、2人は権五郎(げんごろう)という犬を連れた恭一という青年と出会いました。つぐみは恭一のことをひどく気に入り、そのあと恭一を紹介された陽子ちゃんも加わって、4人は一緒に行動するようになります。

 

ある日、熱を出したつぐみのもとに、恭一が見舞いにやって来ました。つぐみは恭一に「何か話をしてほしい」と頼みます。恭一は、子供のころ心臓が悪かった話や、その時の体験を語ります。

まりあは、初めて恭一に会った時に感じたただならぬ落ち着きは、このような経験から来ているのだと悟ります。そして、話を聞き終わったつぐみは、「おまえを好きになった」と恭一に告げました。

権五郎の失踪

まりあは、あるとき恭一からの電話で「権五郎がさらわれた」と相談されました。恭一は以前に地元の高校生たちから暴力を受けていたので、彼らの仕業だと推測します。

実は恭一は、まりあたちの街に新しく立つホテルの息子で、そのせいで宿泊施設を営む地元の一部の人から憎まれていたのでした。

必死に探した後、権五郎は無事に見つかりました。しかし、また別の夜に何者かに連れ去られ、2度と帰ってくることはありませんでした。

 

この時から、つぐみの命がけの復讐が始まります。まずつぐみは、権五郎とそっくりの犬を連れてきて、権五郎を連れ去ったであろう高校生がたむろするバーに出向きます。

そしてそのうちの1人に権五郎似の犬を見せつけ、家に急いで戻ってきました。それを聞いたまりあは驚きます。

 

そしてその日の夜中、もう1つ事件が起きました。眠っていたまりあが物音で目を覚ますと、泥だらけの陽子ちゃんが泣きながらつぐみを諭していたのです。

何があったのか聞くと、「つぐみ、夜中じゅうずっと穴を掘っていたのよ」と言いました。実は、権五郎が連れ去られてからというもの、陽子ちゃんはつぐみが夜中に1人でどこかへ行っていることを不審に思っていたのでした。

陽子ちゃんは、落とし穴にはまっていたのが権五郎をさらった高校生だったことを明かします。まりあは、病弱なつぐみが自分の命を投げ出して、人を殺そうとしたのだと思いました。

手紙

穴を掘ったときに無理をしたせいで、つぐみは体調を崩して入院してしまいました。いつもならすぐに回復するのですが、今度ばかりはその力が残っていないようです。

そして見舞いに来たまりあに、つぐみは「あたし、きっと死ぬ」と告げました。今までは、つぐみの中には激情があり、そのおかげで死なずに済んでいました。しかし今は、何にもやる気が起きないのだと言います。

つぐみの憎たらしい性格も、常に何かに怒っているのも、全て病魔と戦うために自分を奮い立たせる起爆剤だったのでした。つぐみの言葉を受け止めたまりあは、夏休みを終えて東京に帰ります。

 

そして、まりあは生死をさまよった後に回復したつぐみから手紙をもらいます。そこには、これまで誰にも告げられなかったつぐみの本音が書かれていました。しかしその文面は、つぐみらしく強気で荒い言葉遣いで書かれているのでした。

『TUGUMI』の解説

つぐみはなんで「いやな女の子」?

「確かにつぐみは、いやな女の子だった」という一文で始まる『TUGUMI』。まりあがつぐみについて「わがままで、甘ったれで、ずる賢くて、意地悪で」と散々言っているように、つぐみは確かにいやな女の子です。

「相変わらず、バカそうだな」「ただめし食いのブス」「本当に肝っ玉の小せえ人達だな」これらはすべて、つぐみが放った言葉です。

わざとやってるの?と思わず笑ってしまうほど言葉遣いが荒いのですが、つぐみはなぜこれほどまでにいやな女の子なのでしょうか。

 

これは、病気に打ち勝つためなのだと思います。「病は気から」と言いますが、病魔に立ち向かうには強気でいないと負けてしまうのではないでしょうか。

実際に、戦う気力がなくなったつぐみは、自分の死を予期していました。つぐみのこの異常な強さに触れた時、私はあさのあつこの『ガールズ・ブルー』という小説に登場する、美咲(みさき)という女の子のことを思い出しました。

彼女も余命宣告をされるほど生まれつき体が弱かったのですが、なんとか高校生まで生きることができました。その結果、人の弱みにつけこんで容赦なく相手を攻撃するような、かなり強い性格になってしまったのです。

彼女たちを見ていると、自分の力ではどうにもできないものに反抗するためには、尋常じゃないパワーと精神力が必要なのだと思います。

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落ちこぼれ高校生4人が、精いっぱい生きる様子が描かれます。病弱な美少女なのに同情されることが嫌いで、非常に気の強い美咲は、物語のアクセントとなっています。

『TUGUMI』の感想

不思議な構成

『TUGUMI』は、「人生」「よそ者」「夜のせい」「祭り」「怒り」という風に12個の章で構成されています。

しかし、これらは小説の中の章というよりは、1つ1つが独立した短編小説のように感じました。 そのため、どこから読んでも楽しめる不思議な小説です。

また、つぐみと恭一との恋愛は、愛のささやきもスキンシップもほとんどない非常にあっさりしたものです。しかし、表面には表さないだけでお互いのことを思い合っているのが伝わりますし、確かに愛の質量を感じられる関係だと思いました。

故郷を持つ人に読んでほしい!

東京に引っ越したまりあは、銀座の真ん中で潮風を感じたり、突然海が恋しくなったり、しきりに故郷を懐かしがります。山本旅館が無くなる前に、最後の夏を過ごしに行った時も、「この瞬間がずっと終わらなければいい」と何度も思っています。

またつぐみも、手紙で「この町で死ねるのは嬉しいことです」と言っています。このことから、まりあもつぐみも強く故郷を愛していることが伝わってきます。

 

私はこれほど思い入れのある故郷を持っていないので、まりあたちの感覚はあまり分かりませんでした。

ですが、大好きな故郷を持っている人なら、故郷を恋しがるまりあたちの気持ちに強く共感できるのではないかと思います。

『TUGUMI』の読書感想文のヒント

  • 弱い立場(愛人の子)側を主人公に据える意味を考える
  • つぐみの性格を、自分ならどう受け止めるか考える
  • 作中での「お化けのポスト」の役割を考察する

作品を読んだうえで、5W1Hを基本に自分のなりに問いを立て、それに対して自身の考えを述べるというのが、1番字数を稼げるやり方ではないかと思います。感想文のヒントは、上に挙げた通りです。

ネットから拾った感想文は、多少変えたとしてもバレるので、拙くても自力で書いたものを提出するのが良いと思います。

最後に

今回は、よしもとばなな『TUGUMI』のあらすじと感想をご紹介し、解説しました。

夏の夜の散歩や夏祭り、皆で輪になって食べるスイカなど、エモすぎるシーンが盛りだくさんです。Whiteberryの「夏祭り」やZONEの「secret base」が流れて来そうな小説です。とても爽やかな青春小説なので、ぜひ読んでみて下さい!

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ABOUT ME
yuka
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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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