純文学の書評

【夏目漱石】『坊っちゃん』のあらすじ・内容解説・感想|感想文のヒント付き

漱石作品の中で一二を争う人気で、暴力沙汰・悪口・ドロドロの人間関係・江戸っ子らしい義理人情にあふれた痛快な小説『坊っちゃん』。

今回は、夏目漱石『坊っちゃん』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『坊っちゃん』の作品概要

著者夏目漱石(なつめ そうせき)
発表年1906年
発表形態雑誌掲載
ジャンル長編小説
テーマ正義

『坊っちゃん』は、1906年に俳句雑誌『ホトトギス』(第9巻第7号)で発表された夏目漱石の長編小説です。無鉄砲な坊っちゃんが、教師として奮闘する物語です。漱石が、松山の学校で指導した経験が元になっています。明治時代に発表されました。

著者:夏目漱石について

  • 芥川を発掘
  • 森鷗外のライバル
  • ロンドンに留学するも、精神を病んで帰国
  • 教師、大学教授を経て新聞社に入社

夏目漱石は、当時大学生だった芥川龍之介の『鼻』を絶賛しました。芥川はそれによって文壇デビューを果たしました。また、森鷗外は執筆活動を中断していた時期がありましたが、漱石を意識して執筆を再開したという話が残っています。

漱石は、東大を卒業後に教師や大学教授を経て政府からロンドン留学を命じられます。しかし、現地の雰囲気に上手くなじめずに精神を病んでしまったため、帰国を余儀なくされました。

帰国後、漱石は朝日新聞の専属作家(朝日新聞で小説を連載する小説家)となりました。当時多くの新聞社からオファーが来ていましたが、その中で朝日新聞が提示した月給が一番高かったため、漱石は朝日新聞に入社しました。

 

また、漱石は造語を多く用いました。漱石の造語で、今日一般的に使用されている言葉には、「浪漫(ロマン)」「沢山(たくさん)」などがあります。

他にも、「高等遊民(高等教育を受けたにもかかわらず、仕事をしないで過ごす人のこと)」「低徊趣味(ていかいしゅみ。世俗的な気持ちを離れて、余裕を持って物事に触れようとする趣向)」があります。

漱石の門人・門下生には、寺田寅彦・和辻哲郎・芥川龍之介・久米正雄・松岡譲などがいました。漱石の作品は、国外でも評価されています。

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『坊っちゃん』のあらすじ

子供の頃から、周囲と折り合いをつけることが苦手だった坊っちゃんは、愛媛で教師をすることになりました。理不尽なことを許せない正義感の強い坊っちゃんは、教師たちと衝突してしまいます。

冒頭文紹介

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。

坊っちゃんの性格が端的に表されている一文です。

登場人物紹介

私(坊っちゃん)

売られたケンカは買うタイプの主人公。短気なので、家族との折り合いが悪い。

清(きよ)

坊っちゃんの家で働いている使用人。坊っちゃんのことをかわいがっている。

山嵐(やまあらし)

数学の教師。初めは坊っちゃんと敵対していたが、徐々に仲良くなる。

赤シャツ

いつも赤いシャツを着ている教頭。卑怯者。

うらなり

内気で気が弱い性格。婚約者のマドンナを赤シャツに奪われた。

マドンナ

うらなりの婚約者だったが、今は赤シャツと交際している。

『坊っちゃん』の内容

この先、夏目漱石『坊っちゃん』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

正義感のかたまりが悪を成敗する話

清と私

主人公のは子供のころから気性が荒かったので、親や兄からは厄介者として扱われていました。そんな中、いつも私の味方をしてくれたのは、使用人として働いていたおばあさんのだけです。

父親と死別後、兄から渡された600円を学費に、私は現在の東京理科大に入学しました。卒業後は母校の校長に勧められて、四国の中学校に赴任することになったので、私は清を東京に置いて愛媛県に向かいます。

坊っちゃん、先生になる

私は、学校の個性的な教師たちに、赤シャツ・山嵐・野だいこ・うらなりなどとあだ名をつけて、それを清への手紙に書いて送りました。

そして私は、生徒達に変なあだ名をつけられたり、いたずらをされたりと、彼らと良い関係を築けないでいました。

赤シャツへの不信感

やがて私は、赤シャツがうらなりの婚約者のマドンナを奪ったうえ、邪魔なうらなりを左遷したことを知って怒ります。私と山嵐は協力し、赤シャツと赤シャツについて回る野だいこを懲らしめるための策を練ります。

しかし、赤シャツの陰謀によって山嵐が辞職に追い込まれてしまいました。私と山嵐は、赤シャツの不祥事を暴くための監視を始めます。

赤シャツへの逆襲

何日にも及ぶ監視の後、2人はついに芸者遊び帰りの赤シャツと野だいこを取り押さえることに成功しました。私は山嵐と芸者遊びについて問い詰め、ぼこぼこに殴ります。

その後すぐに辞職した私は、東京に帰って鉄道の技術者になりました。そして他の家の使用人になっていた清を使用人として雇い直し、清が肺炎で亡くなるまで一緒に暮らしました。

『坊っちゃん』の解説

坊っちゃんマインド

『坊っちゃん』には、権力者に懸命に立ち向かう主人公の様子が描かれています。ここで言う権力者とは、人事権を握っている赤シャツです。

赤シャツに異動を命じられて従うしかないうらなりと、そんな理不尽なことをする赤シャツをこらしめようと躍起になる坊っちゃんが対照的です。

 

結局、坊っちゃんは好き勝手に権力に反抗した後、教師を辞めざるを得なくなりました。坊っちゃんは赤シャツに負けてしまいましたが、それを全く後悔していないのが良いなと思います。

正義のために戦ったのだから、負けても悔いはないと考え、東京で新たな生活を始める坊っちゃんのマインドを見習いたいです。

血の繋がらない親子

『坊っちゃん』のテーマが「権力者との戦い」なのだとすれば、裏テーマは「愛」です。坊っちゃんは四国で教師をしながらも、東京に置いてきた清のことを心配したり、手紙を書いたりします。

坊っちゃんは、その無鉄砲な性格のせいで家族とあまり仲が良くなく、親からの愛を十分に受けていませんでした。代わりに、彼を無条件に認めてひたすら溺愛(できあい)していたのは、使用人の清です。

坊っちゃんと清は、主人と使用人という関係ですが、そんな上下関係を感じさせないのが『坊っちゃん』の魅力でもあると思います。清は、坊っちゃんの精神的な母親の役割を果たしていたのだと思いました。

『坊っちゃん』の感想

江戸っ子の漱石が書いたということで、坊っちゃんは口が悪くてものすごく短気です。すぐにカッとなってしまうので、「もうちょっと落ち着こう?」と言いたくなるほどです。

ただ、言いたいことを我慢しないで全部言ってくれるので、読んでいて気持ちよかったです。また、テンポよくどんどんことが進んでいくので、飽きずに読めると感じました。

 

坊っちゃんの判断基準は、「善か悪か」です。正義のためなら何でもするし、悪はどんな手を使ってでも排除しようとします。だからこそ、同僚のかたきを打つという、少々おせっかいなことにも全力になるのです。

後先考えず行動する坊っちゃんは本当に「無鉄砲」ですが、いさぎよくてかっこいいです。坊っちゃんのように生きられたら楽しいだろうなと思いました。

『坊っちゃん』の読書感想文のヒント

  • 正義感を押し通すのは善か悪か考える
  • 坊っちゃんと清の関係を深堀りしていく
  • 文脈から、坊っちゃんの人物像をを具体化する

作品を読んだうえで、5W1Hを基本に自分のなりに問いを立て、それに対して自身の考えを述べるというのが、1番字数を稼げるやり方ではないかと思います。感想文のヒントは、上に挙げた通りです。

ネットから拾った感想文は、多少変えたとしてもバレるので、拙くても自力で書いたものを提出するのが良いと思います。

『坊っちゃん』の朗読音声

『坊っちゃん』の朗読音声は、YouTubeで聴くことができます。

最後に

今回は、夏目漱石『坊っちゃん』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

漱石は8人兄弟の末っ子で、2歳の時に養子に出された経験があります。そのため、両親からの愛情をしっかり受けたとは言いがたい幼少期を過ごしました。

この漱石の経験は、同じく両親から相手にされなかった坊っちゃんの人物造形にかかわっていると考えられます。

漱石は優等生だったので、心の中の叫びを坊っちゃんに託して、無鉄砲な坊っちゃんに自分の気持ちを代弁させたのかもしれません。ぜひ読んでみて下さい!

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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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