純文学の書評

【川端康成】『雪国』のあらすじ・内容解説・感想|朗読音声付き

日本人で始めてノーベル文学賞を受賞した、川端康成の代表作『雪国』。

今回は、川端康成『雪国』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『雪国』の作品概要

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著者川端康成(かわばた やすなり)
発表年1935年~1947年
発表形態雑誌掲載
ジャンル長編小説
テーマ恋愛

『雪国』は、1935年~1947年に雑誌『文藝春秋』『改造』など計11誌で断続的に連載された川端康成の長編小説です。新潟県湯沢町を舞台に、そこで生きる女性やはかない命などが描かれています。

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1957年と1965年に映画化されました。モノクロで雰囲気のある映画です。

著者:川端康成について

  • 新感覚派の作家
  • 新人を発掘し、育てた
  • ノーベル文学賞を受賞した
  • ガス自殺した

川端康成は、大学卒業後に作家の横光利一(よこみつ りいち)らと雑誌『文藝時代』を作り、新感覚派の作家として活躍しました。岡本かの子、三島由紀夫などの新人を発掘し、世に送り出した功績は大きいです。

1968年にノーベル文学賞を受賞しましたが、72歳で動機不明のガス自殺をしました。

『雪国』のあらすじ

島村は、馴染みの芸者に会うために列車に乗っていました。列車の中には、病人の男と男に付き添う娘がおり、島村は2人に興味を惹かれます。

島村は列車を下りた後に芸者の駒子のもとに向かいますが、そこで島村は、駒子の踊りの師匠の息子が、列車で見た病人の男(行男)だと知りました。また、付き添いの娘・葉子も駒子の知り合いでした。

そして、島村はその男と駒子がいいなずけの関係であったことを知りますが、駒子はそれを否定します。翌年、島村が再び雪国を訪れた時、行男は亡くなっていました。島村は葉子に惹かれますが、葉子は行男のことを忘れられずにいました。

冒頭文紹介

『雪国』は、以下の一文からはじまります。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

ノーベル賞受賞作家の代表作の最初の文であるので、これを見たら『雪国』だと判断できるようにしておきたいです。

登場人物紹介

島村(しまむら)

妻子持ちの主人公。物書きをしている。馴染みの芸者・駒子のもとに通う。

駒子(こまこ)

20歳前後の芸者。結婚しているが、夫とは別れたいと思っている。

葉子(ようこ)

駒子の住む温泉町出身の娘。駒子の知り合いで、病気の行男を看病する。

行男(ゆきお)

26歳の病人。駒子の師匠の息子で、駒子とは幼なじみ。

『雪国』の内容

この先、川端康成『雪国』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

温泉街の人間模様

島村と駒子

12月初め、島村は馴染みの芸者・駒子に会うために、雪国に向かう汽車に乗っています。そこで島村は、病人の男に付き添う恋人らしき若い娘に興味を惹かれました。彼らは、島村と同じ駅で降りました。

そして旅館に着いた島村は、駒子と再会して朝まで過ごします。彼らは前の年に出会ったばかりです。旅館に泊まった島村の部屋にお酌に来たのが、三味線と踊り見習いの19歳の駒子だったのです。

お酌をしたあと、駒子は一度は島村の誘いを断りますが、その日の夜に酔って島村の部屋にやってきて、一晩を過ごしたのでした。

行男

次の日、島村は駒子に誘われて、彼女の踊りの師匠の家に行きます。そこには、島村が昨日汽車の中で見かけた病人がいました。彼は、師匠の息子で行男という人物でした。

付き添っていた娘は葉子と言って、駒子とは知り合いです。島村は、駒子は行男のいいなずけで、駒子は行男の治療費を稼ぐため芸者に出たのだと聞かされますが、駒子はそれを否定しました。

そして島村が東京に帰る日、「行男が危篤状態だ」と葉子が知らせにきます。しかし駒子は、「行男が死ぬところを見たくない」と言い、そのまま島村を駅まで見送りに行きました。

「いい女」

2年後の秋、島村は再び駒子の旅館を訪れます。その前の年の2月に来る約束を破ったことを、駒子は根に持っていました。島村が東京に帰った後、行男は亡くなり、師匠も亡くなったのだと言います。

そして島村が来てからというもの、駒子はお座敷の合間に島村の部屋に通います。ある夜、島村のもとには駒子からの伝言を預かった葉子がやって来ます。島村は、葉子と話すうちに葉子に惹かれていきました。

葉子は、死んだ行男をまだ愛していました。そして、それを知っている駒子から「あなたは気ちがいになる」と言われていることを泣きながら打ち明けます。

 

葉子が帰ったあと、島村はお座敷の終わった駒子と酒を飲んで過ごします。ふと、島村が駒子に「いい女だ」と言うと、駒子は激しく泣いてしまいました。

葉子の死

島村は、東京にいる妻子のことを忘れたように、冬の間ずっと旅館に泊まり続けます。ある夜、映画館が火事になってしまい、島村と駒子は駆けつけました。すると、1人の女が2階から落ちるのが見えました。

その女が葉子だと分かった頃には、葉子は動かなくなっていました。駒子は、葉子に駆け寄って彼女を抱きしめます。そしてそのまま、「この子、気がちがうわ。気がちがうわ」と叫びました。

『雪国』の解説

冒頭文について

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

『雪国』は、ノーベル賞作家の作品であるため英訳されましたが、多くの訳者が翻訳に苦戦しました。理由は、冒頭の一文が訳せないからです。

英語には、どんな文にも必ず主語があります。近代化した日本は今でこそ主語をつける習慣がありますが、もともと日本の文章には主語はあってもなくても良いということになっています(日本の古典作品で、主語は省略されていることが多いです)。

そのため、何を主語にして訳すかが問題となり、いろいろなバージョンが生まれました。川端康成が認めた名文家のエドワード・サイデンステッカーは、「The train came out of the long tunnel into the snow country. 」と訳しました。

『雪国』の感想

駒子の涙

島村が「いい女だ」と言ったときに、駒子が泣いてしまった理由について考えました。素直に受け取れば普通に褒め言葉ですし、島村もそのつもりで言ったのだと思いますが、駒子は違うように受け取ったようです。

そして私は、駒子は「(都合の)いい女」と言われたと感じたのではないかと思いました。島村の年齢は不詳ですが、妻と子供がいるので当時の感覚で言うと20代後半〜というのが予想できます。

20歳前後の女の子からしたら、そのくらいの社会人にはあこがれの対象です。ましてや、島村は東京という大都会に住んでいるので、田舎に住んでいる駒子の島村へのあこがれは、より強かったのではないかと思われます。

 

しかし一方で、駒子は愛人という立ち位置で、いつ島村が通って来なくなってもおかしくない不安定な状況です。これだけ好きなのに「2番目」なのは、彼女にとってあまり触れられたくない部分なのかなと思います。

そのため、そういうことに関して敏感になっている駒子は、最愛の人から現実を突きつけられて泣いてしまったのだと考えました。

自分が同じ立場で、好きな人からそう言われたら、きっと相当ショックを受けるだろうなと思いました。

『雪国』の英語版

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『雪国』の英語版は、単行本で読むことができます。川端が認めたエドワード・サイデンステッカーによって翻訳されています。本文と比較しながら読むと面白いです。

『雪国』の朗読音声

『雪国』の朗読音声は、YouTubeで聴くことができます。

『雪国』の名言

なんとなく好きで、その時は好きだとも言わなかった人の方が、いつまでもなつかしいのね。別れたあとってそうらしいわ。

大切なものは失ってから気づくということでしょうか。川端はこのようなしっとりとした文章を書く作家なので、『雪国』のように人の心理が交錯する様子を描くのが非常に上手いと思います。

最後に

今回は、川端康成『雪国』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

長めの小説ですが、文章を書く天才の作品なのですらすら読めると思います。当時の人が、愛人とどういう風に付き合っていたかを知りたい人におすすめです。

青空文庫にはまだありませんが、電子書籍化もされていて手軽に手に入るので、ぜひ読んでみて下さい!

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yuka
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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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