純文学の書評

【樋口一葉】『十三夜』のあらすじ・内容解説・感想

樋口一葉は明治の作家なので、文章は完全に古文です。そのため、読みにくさを感じる人も多いと思いますが、現代の人でも共感できる内容なのでぜひ読んでほしい作品です。

今回は、樋口一葉『十三夜』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『十三夜』の作品概要

著者樋口一葉(ひぐち いちよう)
発表年1895年
発表形態雑誌掲載
ジャンル短編小説
テーマ悲劇

『十三夜』は、1895年に文芸雑誌『文芸倶楽部』(閨秀小説号)で発表された樋口一葉の短編小説です。家族を捨てて帰省した女性が、再び嫁ぎ先に戻るまでが描かれています。

十三夜は9月13日のことで、秋口の夜が舞台となっています。1953年に、『大つごもり』『にごりえ』とともにオムニバス映画として映像化されました。

著者:樋口一葉について

  • 職業女流作家
  • 17歳で家を継ぎ、借金まみれの生活を送った
  • 「奇蹟の14か月」に名作を発表
  • 24歳で死去

樋口一葉は、近代以降初めて作家を仕事にした女性です。美貌と文才を兼ね備えていたので、男社会の文壇(文学関係者のコミュニティ)ではマドンナ的存在でした。

父の死によって17歳で家を継ぐことになり、父が残した多額の借金を背負いました。「奇蹟の14か月」という死ぬ間際の期間に、『大つごもり』『たけくらべ』『十三夜』などの歴史に残る名作を発表したのち、肺結核で亡くなりました。

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『十三夜』のあらすじ

お関(おせき)は、役人の勇と結婚しました。しかし、子供が生まれてからというもの、お関は勇からDVを受けるようになります。耐えかねたお関は、両親に離婚する旨を伝えに行きましたが、離婚は許されませんでした。

その帰り道、車に乗ったお関は、その車夫(車を引く人)がかつて好意を抱いていた録之助(ろくのすけ)だと知り、なんとも言えない気持ちになるのでした。

登場人物紹介

お関(おせき)

主人公。夫のDVに耐えきれず、息子を捨てる覚悟で実家に帰省する。

録之助(ろくのすけ)

かつてお関と恋愛関係にあった男。現在は、その日暮らしをするまで落ちぶれている。

原田勇(はらだ いさお)

お関の夫。社会的地位の高い職業に就いている。子供が生まれてから、お関につらく当たるようになる。

『十三夜』の内容

この先、樋口一葉『十三夜』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

身分違いの恋

お関の決意

お関は、息子の太郎を家において、1人で実家に帰ってきました。夫と離婚したいという旨を両親に伝えるためです。お関は夫のからDVを受けており、これまで我慢していたのでした。

しかし、お関の弟は夫の勇のおかげで昇給できたという背景があり、離婚を切り出すのはお関にとってつらいことです。そして、意を決したお関は、「わたしは今夜限り、原田の家には帰らないつもりで出てきました」と伝えました。

加えて、これまで夫から受けてきた精神的な嫌がらせの数々を両親に打ち明けます。それを聞いた母親は腹を立て、「もう我慢しなくて良いのよ」とお関をなぐさめました。

一方で、父親は「今の家の発展には原田の力が必要だから、今まで通りしんぼうして暮らしてほしい」と涙ながらに言います。父の涙を見たお関は、「息子の太郎を、魂一つで守る気持ちでしんぼうします」と勇のところに戻る決心をしました。

再会

お関は、実家から人力車に乗って夫のいる家に向かいます。ふとした瞬間に車夫(人力車を引く人)の顔を見たお関は、「もしかしてお前さん」と声を掛けます。その車夫は録之助と言って、お関が学生だった頃に通っていたタバコ屋の息子でした。

話を聞くと、録之助はいまは車夫として生計を立てているのだと言います。録之助は、本当はお関のことが好きだったのですが、彼女が結婚をすると聞いたころから生活が乱れていきました。

そして、お関が妊娠したことを知ったときに、やけになって結婚しましたが、だらしない生活をやめる子とはできませんでした。その結果、妻と子供を失って現在に至っているのだと言います。

それを聞いたお関は、「誰しもみなこんなつらい世の中にたった一人で生きているのではないのだと思ってくださいな、私も世間のどこかにいます」とつぶやきました。

 

実は学生時代、お関も録之助のことを想っていました。しかし、勇との結婚が両親によって決められてしまい、お関は録之助との結婚を諦めなければならなかったのです。

そうしているうちに、車は原田の家に着きました。お関は録之助に代金を支払い、家に帰っていきます。録之助も、自分の粗末な家に向かって車を引くのでした。

『十三夜』の解説

作品の立ち位置

一葉には、本意ではない結婚をした女性が主人公の作品がいくつかあります。そこでは、女性たちが挫折を乗り越えて、人としてどう生きるかという問題が取り上げられています

『十三夜』も、家のために不本意な結婚をしたのち、亭主から冷遇されるお関が描かれているので、こうした一連の作品の一部だと考えられます。

浄瑠璃との関係

『十三夜』は、浄瑠璃『摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』下の巻と似ていると指摘されます。

例えば、嫁いだ娘が実家へ戻ってくるところや、父親が娘の嫁ぎ先に恩を感じているのに対し、母親は何よりも娘の気持ちを優先させるという、両親の対照的な対応が描かれていることです。

また、封建的な忠義を重んじる浄瑠璃と、親や夫に従順であることを求められるお関の様子は、十分リンクしています。

水野亜紀子 「樋口一葉『十三夜』論 : お関の覚悟の行方」(人文学部研究論集 2013年1月)

『十三夜』の感想

叶わぬ恋

お関は、地位の高い勇と結婚しているため、現在はお金持ちの婦人です。一方で録之助は、日雇いのような仕事をしていて、その日一日暮らすのがやっとなギリギリの生活をしています。

2人は学生の頃は同じ目線で恋をしていたのに、社会的な地位の差が明らかになって、それがとても叶わなくなってしまったのが、この小説の一番悲しいところです。

「小学生の時に好きだった男の子が、成人式で再会したらブルーカラーだった」みたいな感覚でしょうか。ちょっと切ないです。

全集には、きれいな着物を着た伏し目がちのお関と、自信なさげにうなだれる録之助の挿絵があります。身分の差が一目でわかる絵で、見ていて悲しくなりました。

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読みやすい文庫版です。『にごりえ』だけでなく、『たけくらべ』『やみ夜』『わかれ道』『うもれ木』『十三夜』の現代語訳が収録されています。

最後に

今回は、樋口一葉『十三夜』のあらすじと感想をご紹介しました。

一葉は、実生活で失恋したこともあって、比較的切ない小説を多く書いているような印象があります。なので、メンタルの状態が良い時に読むことをおすすめします!

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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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