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純文学の書評

【宮沢賢治】『注文の多い料理店』のあらすじ・内容解説・感想|朗読音声付き

童話作家・宮沢賢治の作品は、グリム童話のように意外とダークな世界観の作品が多いです。中でも代表作『注文の多い料理店』は、かなり怖い話になっています。

今回は、宮沢賢治『注文の多い料理店』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『注文の多い料理店』の作品概要

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著者宮沢賢治(みやざわ けんじ)
発表年1924年
発表形態単行本
ジャンル童話
テーマ近代化への疑問

『注文の多い料理店』は、1924年に杜陵(とりょう)出版部と東京光原社によって出版された宮沢賢治の短編集『注文の多い料理店』に収録されている童話です。狩猟をしに山にやって来た青年2人が、西洋料理店「山猫軒」を見つけてそこに入っていく物語です。

岩手県花巻市にある宮沢賢治記念館には、「Wildcat House 山猫軒」というレストランがあります。「山猫ぞうすい」「山猫すいとん」など、作品にちなんだメニューが楽しめます。

Wildcat House 山猫軒

著者:宮沢賢治について

  • 仏教と農民生活に主軸を置いて創作活動にはげんだ
  • 宗派の違いで父親と対立
  • 理想郷・イーハトーブを創造
  • 妹のトシと仲が良かった

宮沢賢治は熱心な仏教徒で、さらに農業に従事した人物です。宗派の違いで父親と対立し、なかなか和解には至りませんでした。故郷の岩手県をモデルにした理想郷・イーハトーブを想像で創り上げ作品に登場させました。

妹のトシは賢治の良き理解者で、トシが亡くなったときのことを書いた『永訣(えいけつ)の朝』は有名です。

賢治は、コスモポリタニズム(理性を持っている人間はみな平等という思想)の持ち主であるため、作品にもその色が出ています。生前はほとんど注目されず、死後に作品が評価されました。

『注文の多い料理店』のあらすじ

イギリス風の青年紳士2人は、山奥に狩猟にやってました。そこで、2人は西洋料理店を見つけます。そこには「当軒は注文の多い料理店ですから……」というような注意書きがいくつかあり、紳士たちは進んで中に入っていきます。

店の中にはいくつもの扉があり、扉には「髪をとかして、履き物の泥を落とすこと」「金属製のものを全て外すこと」という変わった注文が書かれていました。2人は怪しむことなく注文に答えて進んでいきますが、やがて店主のたくらみに気づいてしまいます。

登場人物紹介

紳士たち

イギリス風の格好をした青年たち。東京から猟のために山へやって来た。

『注文の多い料理店』の内容

この先、宮沢賢治『注文の多い料理店』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

文明社会への抵抗

2人の紳士

2人の若い日本人紳士が、山に猟に来ています。彼らはイギリスの兵隊のような恰好をして、鉄砲を持ち、白くまのような犬を2匹連れていました。「何でもいいから撃ってみたい」と彼らは口々に話します。

やがて、2人は人の手の入っていない山奥に入ります。山奥過ぎてあまりにも過酷な環境なので、案内人はいつの間にかいなくなり、2匹の犬は泡を吹いて死んでしまいました。それを見た紳士たちは、「ぼくは、2,400円の損害だ」「ぼくは、2,800円の損害だ」と嘆きます。

獲物が見当たらないので山を下りようとした時、風が吹きました。振り返ると、立派な西洋風の家があります。そこには「西洋料理店 山猫軒」とありました。おなかを空かせた紳士たちは、入ってみることにしました。

おかしな注文

入口の扉を開けると、「特に太ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」とあります。「大歓迎」という文字を見て喜んだ紳士たちは、廊下を進んでみずいろの扉の前に立ちました。

そこには、「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」と書かれています。それを見た紳士たちは、「流行っている店なんだ」と思いました。

 

みずいろの扉を開けると、今度は赤い扉があります。そこには、「ここで髪をきちんとして、それから靴の泥を落してください」と書かれていました。2人は、指示通りにブラシで靴の汚れを落とします。

それ以降も、「金属製の物を外してください」「顔にクリームをぬってください」「香水を髪にふりかけてください」と奇妙な注文が続きます。香水はなにやら酸っぱい匂いがして、2人は不審に思いますが、なおもそれに従い続けます。

レストランの正体

最後の扉で、「もうこれだけです。どうかからだ中に、つぼの中の塩をよくもみ込んでください」とありました。ここで2人は、ようやく異変に気づきます。そして、「このレストランは来た人を西洋料理にして食べる店なのだ」と悟りました。

紳士たちはすぐに戻ろうとしましたが、入ってきた扉は開きません。部屋の奥にある扉の鍵が穴からは、青い目玉がこちらを見ています。2人は恐怖のあまり、顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまいました。

 

そのとき、死んだはずの2匹の犬が、扉を突き破って部屋の中に入ってきました。すると、部屋は煙のようにぱっと消えて、気がつくと2人は草の中に立っていました。

風がぶわっと吹きます。紳士たちはそのまま東京に帰りましたが、恐怖のあまりくしゃくしゃになった顔だけは元に戻りませんでした。

『注文の多い料理店』の解説

山猫の広告

山猫軒の扉には、店主からの言葉が書いてあります。例えば、「ことに太ったお方や若いお方は大歓迎いたします」という文は、「太った方」と「若い方」に何の関係もないため、不自然な文です。

しかし、紳士たちは「大歓迎します」という文に引っ張られて、疑問を持たずに店に入ってしまいます。

山猫は、このように姿を現さないにもかかわらず、扉の張り紙を利用して言葉巧みに紳士たちを店の中に引き入れるのでした。

秦野一宏「宮沢賢治と言葉 ─「注文の多い料理店」考」(『海保大研究報告 法文学系』2017年)

『注文の多い料理店』の感想

急速な社会の変化

扉を1つ開けるたびに、何か不穏なものに近づいているという正体不明の恐怖を感じる作品だと思いました。子供のころ初めて読んだときは、私も紳士たちと同じで最後までワナだと気づかなかったので、「もう助からないんだ」と絶望した記憶があります。

 

賢治は岩手県出身で、農業に親しんでいました。そのため、西洋の科学技術による発展を懸念(けねん)していました。自然を破壊したり、命を大切にしない人が増えるからです。

本作では、「何でもいいから撃ってみたい」と乱暴なことを言ったり、犬の命をもののように扱った紳士たちへの報復が描かれています。

賢治はほかにも、文明社会の広がりに対する作品として『月夜のでんしんばしら』などを書いています。賢治の作品を読んでいると、自然の恐ろしさを実感します。

『注文の多い料理店』の序文

『注文の多い料理店』の序文は、青空文庫で読むことができます。

青空文庫 宮沢賢治『注文の多い料理店』序

『注文の多い料理店』の朗読音声

『注文の多い料理店』の朗読音声は、YouTubeで聴くことができます。

『注文の多い料理店』の感想文のヒント

  • 「山奥」とはどんな場所なのか
  • 紳士たちの態度や行動をどう感じたか
  • 顔が「くしゃくしゃ」になってしまったラストについて考える

作品を読んだうえで、5W1Hを基本に自分のなりに問いを立て、それに対して自身の考えを述べるというのが、1番字数を稼げるやり方ではないかと思います。感想文のヒントは、上に挙げた通りです。

ネットから拾った感想文は、多少変えたとしてもバレるので、拙くても自力で書いたものを提出するのが良いと思います。

『注文の多い料理店』英語訳

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『注文の多い料理店』の英語訳は、講談社から出版されています。TOEIC400点以上のレベルです。『注文の多い料理店』の他に、『なめとこ山の熊』『よだかの星』など全7篇が収録されています。

最後に

今回は、宮沢賢治『注文の多い料理店』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

今回は、宮沢賢治『注文の多い料理店』のあらすじと感想をご紹介しました。童話といえど、大人が読んでも楽しめる作品です。ぜひ読んでみて下さい!ぜひ読んでみて下さい!

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yuka
yuka
本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。

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