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純文学の書評

【夏目漱石】『三四郎』のあらすじ・内容解説・感想|名言付き

漱石の前期三部作は『三四郎』『それから』『門』という三作品なのですが、すべてに略奪愛が絡んでくるので、私は「略奪愛シリーズ」と呼んでいます。

その第一弾は、根っからの田舎者の三四郎が、目新しい都会での生活や淡い恋を経験する様子が描かれる『三四郎』です。

今回は、夏目漱石『三四郎』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『三四郎』の作品概要

著者夏目漱石(なつめ そうせき)
発表年1908年
発表形態新聞掲載
ジャンル長編小説
テーマ個人主義

『三四郎』は、1908年に朝日新聞(9月1日~12月29)で連載された夏目漱石の長編小説です。三四郎の恋愛を軸に、当時の日本の批評がなされる作品です。人間の心の機微が描かれている点が評価されています。1955年に映画化されています。

著者:夏目漱石について

  • 芥川を発掘
  • 森鷗外のライバル
  • ロンドンに留学するも、精神を病んで帰国
  • 教師、大学教授を経て新聞社に入社

夏目漱石は、当時大学生だった芥川龍之介の『鼻』を絶賛しました。芥川はそれによって文壇デビューを果たしました。また、森鷗外は執筆活動を中断していた時期がありましたが、漱石を意識して執筆を再開したという話が残っています。

漱石は、東大を卒業後に教師や大学教授を経て政府からロンドン留学を命じられます。しかし、現地の雰囲気に上手くなじめずに精神を病んでしまったため、帰国を余儀なくされました。

帰国後、漱石は朝日新聞の専属作家(朝日新聞で小説を連載する小説家)となりました。当時多くの新聞社からオファーが来ていましたが、その中で朝日新聞が提示した月給が一番高かったため、漱石は朝日新聞に入社しました。

 

また、漱石は造語を多く用いました。漱石の造語で、今日一般的に使用されている言葉には、「浪漫(ロマン)」「沢山(たくさん)」などがあります。

他にも、「高等遊民(高等教育を受けたにもかかわらず、仕事をしないで過ごす人のこと)」「低徊趣味(ていかいしゅみ。世俗的な気持ちを離れて、余裕を持って物事に触れようとする趣向)」があります。

漱石の門人・門下生には、寺田寅彦・和辻哲郎・芥川龍之介・久米正雄・松岡譲などがいました。漱石の作品は、国外でも評価されています。

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『三四郎』のあらすじ

東大に通うため、熊本から上京した三四郎は、生真面目な23歳です。三四郎は、東京で美禰子(みねこ)という女性に恋をしました。その後、三四郎は大学の友人の与次郎や、野々宮、広田との交流を経て、自身の気持ちに気づいていきます。

冒頭文紹介

うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。このじいさんはたしかに前の前の駅から乗ったいなか者である。

のちに田舎者の三四郎を翻弄する女性と、三四郎が同じ列車に乗り合わせているシーンです。

登場人物紹介

三四郎(さんしろう)

23歳の主人公。熊本から上京して東大生になり、美禰子に恋心を抱くようになる。うぶで真面目な性格。

広田(ひろた)

野々宮の師匠で、高校の英語の先生。

野々宮(ののみや)

光の研究にいそしむ30歳の学者。三四郎と同じ熊本出身。

美禰子(みねこ)

三四郎が憧れる女性。亡くなった兄の友人の野々宮と交際をしている。

与次郎(よじろう)

三四郎の大学の友人。広田の家に下宿している。

『三四郎』の内容

この先、夏目漱石『三四郎』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

自由恋愛への憧れ

野暮な三四郎

日露戦争直後の日本。熊本から東大入学のために上京する三四郎は、列車に乗りました。そこで、夫が戦地にいる美しい夫人と知り合います。彼女は、三四郎に「名古屋に行きますか?」と問いました。

三四郎は、名古屋で乗り換えをして東京に向かうつもりでした。三四郎がその旨を伝えると、夫人は「1人では心細いので宿を一緒に探してほしい」と頼みます。

断る理由もなかったため、三四郎はそれを引き受けました。しかし、宿に着いたところでちょっとした事件が起きます。

 

宿の人は、三四郎と夫人を夫婦だと勘違いし、部屋を1つしか用意してくれなかったのです。布団も1つしか用意がなかったので三四郎は困ってしまいますが、夫人はそれでもいいと言います。

三四郎は仕方なく、布団を真ん中で区切って、夫人と接しないように夜を明かします。

朝になって、2人は挨拶をして別れようとしました。そしてすれ違う瞬間、夫人は「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言ってにやりと笑うのでした。

東京での生活

名古屋から東京に向かう列車の中で、三四郎は不思議な男と出会います。彼は、戦争について良い印象を持っていないことを包み隠さずに話しました。当時は、国や戦争への批判はタブーとされていたので、三四郎は驚きながら彼と話して東京へたどり着きました。

 

そんな出来事を経て、三四郎は晴れて東大生になります。そして母の紹介で、東大の医学部の教授・野々宮のもとをたずねます。三四郎は、最新の研究をしている野々宮を深く尊敬しました。

野々宮のもとを去った後、三四郎は森の中に入ります。都会の喧騒(けんそう)から離れて池の前で一息ついていると、三四郎は少し遠くに看護師と美しい女がいるのに気づきます。

女は、小さな白い花を鼻に当てながら三四郎の方へ歩いてきます。そして三四郎の目の前で、花をぽとりと落としました。女が去った後、花を拾って匂いを嗅いだ三四郎は、今まで感じたことのないような感覚を味わうのでした。

野々宮と美禰子

三四郎は、大学では与次郎という人物と仲良くなります。そして三四郎は、与次郎が野々宮の師匠にあたる広田先生の弟子だという事を知ります。

そのあと、三四郎は野々宮に「入院している妹のよし子に届け物をしてほしい」と頼まれます。三四郎は15号室の妹を訪ねました。部屋から出た時、目の前から森の中で見たあの美女と偶然出会います。

彼女は「15号室はどこですか?」と三四郎に聞きました。三四郎が答えると、美女は去って行きます。そして彼女の後姿を見た三四郎は驚きます。なんと、彼女はかつて野々宮が買ったリボンを髪に付けていたのでした。

 

その後、三四郎は与次郎から広田先生を紹介されます。実は、広田先生は三四郎が名古屋からの列車で話をしたあの風変わりな男なのでした。そして三四郎は、広田先生の引っ越しの手伝いをすることになります。

広田先生の引っ越し先には、他に手伝いをしに来ている人が何人かいました。三四郎はその中に、森で見た美女と再会します。彼女は、美禰子(みねこ)という名前でした。

そして広田先生・与次郎・野々宮もぞくぞくと現れ、野々宮は「妹のよし子が退院したあとの下宿先を探している」と言いました。

与次郎の一言によって、野々宮とよし子は美禰子の家に下宿することになります。それを聞いた三四郎は、なんだかもやもやした気持ちになるのでした。

ストレイシープ

広田・野々宮・三四郎・美禰子・よし子は、よし子が退院後に行きたいと言っていた菊人形展(菊でできた人形の展示会)に行きました。

そこで人波に酔った美禰子は体調を崩してしまい、三四郎は彼女を川べりに連れて行きます。「広田先生と野々宮さんは僕たちが急にいなくなって探しているかもしれない」と三四郎は言います。

すると美禰子は、「責任を取るのを嫌がる人だから」と意味深な発言をします。そのとき、つまずいた美禰子を抱きかかえた三四郎は、内心どぎまぎします。そんな三四郎をよそに、美禰子は三四郎の耳元で「ストレイシープ(迷える子)」とささやくのでした。

 

その後、美禰子はもともとよし子の夫になるはずだった人と、結婚することになりました。三四郎は、それを聞いてやり切れない気持ちになります。

そして三四郎は、広田先生の知り合いの画家が描いた、美禰子がモデルになっている絵を野々宮と見ました。その絵は「森の美女」というタイトルでした。しかし三四郎は、「この題は悪い」と言います。

「じゃ、なんとすればいいんだ」という野々宮の問いには答えず、三四郎は「ストレイシープ」とつぶやくのでした。

『三四郎』の解説

新しい感覚を持っている漱石

この小説は、個人主義がテーマになっています。個人主義とは、個人の自由や意思を尊重する思想のことです。それまでの日本では、個人というのは軽視されていて、特に恋愛には重きが置かれていませんでした。

それは、結婚観によく表れています。結婚というのはもともと家同士の契約なので、そこに恋愛感情は必要とされていませんでした。「恋愛なんて、なに生ぬるいこと言ってるの?」というのが当時の価値観です。

 

しかし、それに対抗する形で「好きな人と結婚をして好きな人と子供を作りたい!」という考えが西洋を中心に広がり始めます。

漱石は、イギリスに留学したときにその考えに触れました。そして、恋の芽生えに戸惑う三四郎や、したくない結婚と恋愛について自由に考える美禰子を、『三四郎』で描いたのです。

ちなみに、ドイツに留学した森鷗外も西洋のそういう自由で個人を重視する空気に触れて、『舞姫』を執筆しました。漱石と鷗外はライバルなので、この2作品を比較してみると面白いかもしれません。

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『三四郎』の感想

愛されたかった美禰子

美禰子は、三四郎のことが好きだったから彼に対してスキンシップを取ったりしたのではなく、三四郎が美禰子のことを好きだったから、そういう風に思わせぶりな態度で接したのではないかと思います。

恋人の野々宮は、美禰子よりも学問を優先する人物でした。また新たに結婚が決まった相手も、初めは野々宮の妹のよし子と縁談を進めていました。

しかし、よし子の年齢が若いことなどさまざまな要因があって、彼はよし子との縁談を破棄しなければならなくなり、やむを得ず「じゃあ美禰子で」という感じで美禰子の結婚が決まりました。

このことから、美禰子は自分を心から愛してくれる人に飢えていたことが読み取れるのではないでしょうか。そのため、不器用で野暮だけど、自分のことを全力で好きでいてくれる三四郎に目を付けたのではないかと思います。

 

加えて、当時の時代背景も関係していると思います。女性が自分から積極的に男性に告白することなんて考えられない時代だったので、美禰子は何としてでも三四郎から想いを告げられる必要がありました。

だからこそ、美禰子は平静を装いながら必死にアピールしまくるのですが、鈍い三四郎は美禰子の想いをくみ取ってやれませんでした。美禰子の失望を思うと、胸が痛くなります。

『三四郎』の読書感想文のヒント

  • なぜ、三四郎の出身地は熊本に設定されたのか
  • 『三四郎』に登場する男女を比較してみる
  • 明治時代の大学生の様相を観察してみる

作品を読んだうえで、5W1Hを基本に自分のなりに問いを立て、それに対して自身の考えを述べるというのが、1番字数を稼げるやり方ではないかと思います。感想文のヒントは、上に挙げた通りです。

ネットから拾った感想文は、多少変えたとしてもバレるので、拙くても自力で書いたものを提出するのが良いと思います。

『三四郎』の名言

菊人形展で迷子になった美禰子が、三四郎に言った言葉です。実際の状況と、美禰子の心理の状態が一致している場面です。それでも、三四郎は美禰子の気持ちに気づくことができないのでした。美禰子が空振りした切ない場面です。

最後に

今回は、夏目漱石『三四郎』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

トレンディドラマのような作品なので、当時の日本の雰囲気を知るのにぴったりの小説だと思います。冒頭の夫人の描写からも、戦争で夫を亡くした未亡人が日本に多くいたことや、彼女たちが何を求めていたのかが分かります。

一方で、ろくに授業に出ないで遊びまくる与次郎と、現代のピ逃げ(授業をずる休みすること)する学生が重なって「今も昔も大して変わらないんだな」と思ったりしました。明治時代のリアルな生活をかいま見れる小説です!

↑Kindle版は無料¥0で読むことができます。

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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。

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