純文学のおすすめ作品

軽井沢系男子?芥川龍之介に師事した堀辰雄のおすすめ作品3選

『風立ちぬ』で有名な堀辰雄ですが、実はそれ以外にも評価されている作品があることをご存じでしょうか?

今回は、日本を代表する作家・芥川龍之介に師事した堀辰雄のおすすめ作品をご紹介します。

堀辰雄ってどんな人?


芥川龍之介に師事し、彼の影響を多分に受けている作家です。結核をわずらい、軽井沢での療養生活を送っていました。詳しい人物像や作風についてはこちらの記事をご参照ください。

『風立ちぬ』だけじゃない!堀辰雄の生い立ちと代表作品を紹介『風立ちぬ』というジブリ映画の影響で、同じ題で小説を書いている堀辰雄と、映画の主人公の堀越二郎がごちゃ混ぜになってしまいそうですが、堀辰...

堀辰雄のおすすめ作品

『聖家族(せいかぞく)』

ページ数181ページ
出版年1947年
出版社新潮社

芥川の死を受けて書かれた作品です。

芥川をモデルにした九鬼(くき)、堀自身がモデルになっている青年・扁理(へんり)、芥川の愛人をモデルにした細木(さいき)夫人、その娘のふさ子をモデルにした絹子(きぬこ)によって織りなされる小説です。

人物の名前に関して、西洋人らしい発音なのに漢字が当てられていたりすることからもわかるように、この小説には具体的な舞台設定がされていません。

 

日本のようで日本でなく、外国のようで外国でなく、どこか別の世界のような雰囲気が醸し出されています。また、フロイトの精神分析が日本に輸入された時期でもあったため、この小説では「無意識を描く」ことが実践されています。

私は1年かけてこの小説を繰り返し読んだのですが、読むたびに違う発見があって、結局読めば読むほど分からなくなってしまう迷路のような小説だと思いました。

ただ、「生と死」について深く考察されているので、哲学が好きな人や1つのことを突き詰めて考える人にはとてもおすすめです。考える力が身につくと思います。

『風立ちぬ』

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ページ数240ページ
出版年1951年
出版社新潮社

主人公で小説家の「私」と、その恋人の節子の生活が描かれた作品です。節子は結核に侵されているので、2人は軽井沢の療養所で静かに日々を送ります。

堀自身が結核にかかっており、常に死と隣り合わせだったので、切実に死と向き合う描写が数多く盛り込まれています。

 

例えば、主人公はあるとき夕日をものすごく美しく感じました。そしてその理由が、自分が節子の目を通して夕日を見ていたからだということに彼は気づき、悲しい気持ちになります。

死を予感する人の目には、何もかもが美しく、新鮮に映ると言いますよね。主人公は、節子の死を予期して、無意識のうちに彼女の目を通して夕日を見つめていたのでした。そのことが、彼を悲しませたのです。

 

私自身は死を身近に感じたことがないので、正直彼の心情を完全に理解することができませんでした。

死が近づいてくる恐怖や、その時にどういう感情を抱くのかが具体的に想像できないので、死期が近づいた頃に読み返したくなる作品です。

『菜穂子(なおこ)』

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小学館
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ページ数293ページ
出版年2013年
出版社小学館

母との確執、愛のない結婚生活、姑との不和が主なテーマです。これだけ見ると、超現実的でドロドロのドラマが繰り広げられるのかという印象を受けます。

しかし堀の手にかかれば、こんなに重たいテーマでも割とさらっと書かれます。少なくとも、私はそう感じました。

 

菜穂子は、母親との間に気詰まりな重苦しい空気を感じていました。その正体は、母の恋愛にあります。未亡人だった菜穂子の母は、O村にある別荘で森という小説家の男性と出会います。

彼女は彼に対して特に特別な思いを抱いてはいなかったのですが、その小説家は菜穂子の母に好意を抱いていて、恋愛詩などを送っていました(この小説家の男性は、芥川をモデルにしていると言われています。実際、芥川は愛人に恋愛詩を送っています)。

菜穂子の母は、そのことを常に思い悩み、菜穂子そっちのけで森のことばかり考えるようになりました。

菜穂子は、そんな風に恋愛感情に振り回される母に嫌気がさし、「自分は母と同じ道を辿るまい」と愛のない結婚をして母の元を離れました。そして和解しないまま、母は亡くなってしまいます。

 

冒頭部は、母親の菜穂子への思いを綴った手記と、それを受けた菜穂子の追記という形で構成されています。

そこで描かれるすれ違いが本当にリアルで、例えば、菜穂子が1人でO村にいて、母が東京からやってくると聞いた時に、母が東京を出るタイミングで菜穂子もO村を出発して東京に帰るシーンがありました。

このように反抗的な態度を取ってしまうことはあるので、とても共感できます。「本当に男性が書いたのか?」と疑いたくなるほど、女性の感情の機微が鮮明に描かれている作品です。

【堀辰雄】『菜穂子』のあらすじ・内容解説・感想『菜穂子(なおこ)』は、ジブリ映画「風立ちぬ」のヒロインの名前として有名になりました。映画の中で、菜穂子は芯の強い女性として描かれていま...

最後に

今回は、堀辰雄のおすすめ作品をご紹介しました。

私にとって堀の作品は、落ち着いていて優しいお兄さんのような存在です。世の中には、ぽんぽん言葉が出てくる人と、こちらが言ったことに対してよく考えた後にぽつりと返事を返してくれる人と両方いますよね。

イメージ的には、堀の作品は後者です。堀の作品には会話が少ないという特徴があります。会話が少ない分、登場人物たちは1つの事柄について熟考するのです。

 

物事を深く考える大人しそうな人に優しく語りかけられたら、とても安心しますよね?堀の作品にはそういう類(たぐい)の温かみがあると感じています。

また、使われる言葉にもトゲがないのもポイントです。かつ、現実味を帯びないふわふわした世界観の小説を書くので、私は感情的になっている時に、堀の作品に癒してもらっています!

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yuka
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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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