梶井基次郎は31歳の若さで病死し、生前はあまり注目されませんでしたが、死後に評価が高まった作家です。
今回は、梶井基次郎のおすすめの本を5冊ご紹介します!
初級編
「とりあえず、有名な作品をさらっと読みたい!」「話振られたとき困らないように、代表作だけ知っておきたい!」というビギナー向けに、読んでおけば間違いない作品を3つ紹介します。
『檸檬』
著者 | 梶井基次郎(かじい もとじろう) |
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発表年 | 1925年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 短編小説 |
テーマ | 蘇生 |
『檸檬』は、1925年に文芸雑誌『青空』(創刊号)で発表された梶井基次郎の短編小説です。
憂鬱な気分が、1個の檸檬と出会うことで生き生きとしたものに生まれ変わる過程が描かれています。梶井の高校時代の経験が元になっています。
Kindle版は無料¥0で読むことができます。
あらすじ
精神的に疲弊している「私」は、あるとき果物屋で檸檬を見つけます。その形状や香りを気に入った私は、檸檬を買って持ち歩きます。そして私は、それまで避けていた京都の丸善に入る決意をするのでした。
感想
初めて読んだときのワクワクを、いまだに鮮明に思い出すことができます。あらすじだけを聞くと「ふうん」という感じですが、しばしば「意味不明」とされることもあるラストの興奮、ニヤニヤせざるを得ない「やっちゃった感」が大好きな作品です。
実際に京都の丸善を訪れたとき、観光用に檸檬の模型が飾ってあるのを見て感動しました。京都旅行のお供にぜひ。
『桜の樹の下には』
著者 | 梶井基次郎(かじい もとじろう) |
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発表年 | 1928年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 短編小説 |
テーマ | 生死 |
『桜の樹の下には』は、1928年に文芸雑誌『詩と詩論』(第二冊)で発表された梶井基次郎の短編小説です。
桜や生命と、死を結びつける斬新な内容となっています。話者の「俺」が聞き手に語りかける形式で展開しています。「桜の樹の下には屍体が埋まつている!」という冒頭文が有名です。
Kindle版は無料¥0で読むことができます。
あらすじ
「俺」は、満開の桜の下には死体が埋まっていることに気が付きます。そして、桜がその死体から養分を吸い取っているところを想像しました。
後日、「俺」は生まれたばかりの元気なかげろうを見ました。そのそばには、出産を終えた親かげろうが死んでいました。
感想
美しすぎて怖い、という感覚を抱いた作品です。確かに、桜は非の打ち所がないというか、桜を評価することはあっても逆に非難することはあまりありません。
そういうところに返ってうさん臭さを感じてしまうと言うか、美しいのには意味があると考えてしまうのも分かる気がします。桜の魔性とも言うべきか、桜の裏の顔に目を向けた面白い作品です。
『闇の絵巻』
著者 | 梶井基次郎(かじい もとじろう) |
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発表年 | 1930年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 短編小説 |
テーマ | 闇と光 |
『闇の絵巻』は、1930年9月に文芸雑誌『詩・現実』(第二冊)で発表された梶井基次郎の短編小説です。
梶井が実体験が題材となっており、夜の暗い街道を歩いていくときの心情と空想が描かれます。梶井が文壇で評価されるきっかけとなった作品です。
Kindle版は無料¥0で読むことができます。
あらすじ
山間部の療養地で過ごしている「私」は、月の明るい夜にちょうちんを持たずに出かけます。そこには、昼間とは全く違う世界が広がっていました。私は、闇に魅了されるとともに、光に嫌悪を抱くのでした。
感想
「闇」への印象が変わる作品です。「光」はプラスで「闇」はマイナスという漠然としたイメージがあるため、なにかと「光」が偏重されがちですが、『闇の絵巻』では闇の魅力が存分に語られています。
思えば、闇の中では顔が見えない分普段言えないことが言えるなど、夜の力がはたらくことがあります。「闇も悪くないなあ」と思えた作品です。
中級編
「代表作一通り読んで、もっと他の作品も読んでみたくなった!」という人向けに、ここでは定番からは少しそれた作品をご紹介します。
『冬の蠅』
著者 | 梶井基次郎(かじい もとじろう) |
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発表年 | 1928年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 短編小説 |
テーマ | 倦怠、焦燥 |
『冬の蠅』は、1928年5月に雑誌『創作月刊』で発表された梶井基次郎の短編小説です。療養生活を送る「私」が、冬の蠅を観察する様子が描かれています。
Kindle版は無料¥0で読むことができます。
あらすじ
とある温泉宿で療養している「私」は、冬にはそこに住み着く蠅と日光浴をしていました。蠅は、私が飲み干した後の牛乳ビンの中で出られなくなり、毎日2匹ずつくらい死んでいきます。
また、私は太陽の光に象徴される幸福に傷つけられ、太陽を憎んでいました。
その後数日間放浪した私が宿に帰ると、蠅は寒さと飢えで死んでいました。私は、自身の気まぐれが蠅を殺したように、自分自身をもなにかの気まぐれで殺してしまうのではないかと思い、憂うつになるのでした。
感想
人間の気まぐれで死んでしまう蠅の様子が印象的でした。「私」は牛乳を飲んだ後にビンを放置するため、その中に蠅が入って出られなくなり、蠅は死んでしまいます。私がビンをすぐに片づけたり、ビンにふたをしたりすれば蠅は死なずに済みます。
しかし、倦怠のただなかにいる私はそんなことをするのがおっくうで、毎日毎日蠅の命が失われていくのを見つめるのです。蠅をつぶしたりして積極的に殺すよりも、倦怠から蠅を救わない方が残酷だと感じました。
『Kの昇天』
著者 | 梶井基次郎(かじい もとじろう) |
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発表年 | 1926年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 短編小説 |
テーマ | 死 |
『Kの昇天』は、1926年に文芸雑誌『青空』(第2巻第10号)で発表された梶井基次郎の短編小説です。1人の溺死をについて、主観的な考察がなされる様子が描かれています。
Kindle版は無料¥0で読むことができます。
あらすじ
「私」は「あなた」という人からの手紙によって、Kの死を知りました。「私」とKは療養地のN海岸で出会い、1ヶ月ほど行動を共にした仲でした。
Kの訃報を聞いた「私」は、「K君はとうとう月世界へ行った」と思います。そして、その理由を「あなた」に語りかけます。
感想
溺死という事象を扱いながら、月や海というキーワードを用いて神秘的な仕上がりとなっている作品です。この作品もベースの情景は闇になりますが、死をテーマにしているにもかかわらず悲観的な雰囲気をあまり感じない不思議な作品です。
最後に
今回は、梶井基次郎のおすすめの本を冊ご紹介しました。
ぜひ読んでみて下さい!