純文学の書評

【梶井基次郎】『闇の絵巻』あらすじ・内容解説・感想

『闇の絵巻』は、梶井基次郎(かじい もとじろう)の代表作のうちの1つで、梶井の作品の中で最初に認められたものです。

今回は、梶井基次郎『闇の絵巻』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『闇の絵巻』の作品概要

発表年1930年
カテゴリー短編小説
ジャンル ‐

梶井が通った、川端康成の宿からの帰り道が題材になっています。夜の暗い街道を歩いていくときの心情と空想が描かれます。梶井が文壇で評価されるきっかけとなった作品です。

著者:梶井基次郎について

  • 1901年(明治34年)~1932年(昭和7年)
  • 感覚的なものと、知的なものが融合した描写が特徴
  • 孤独、寂寥(せきばく)、心のさまよいがテーマ
  • 31歳の若さで肺結核で亡くなった

作家として活動していたのは7年ほどであるため、生前はあまり注目されませんでした。死後に評価が高まり、感性に満ちあふれた詩的な側面のある作品は、「真似できない独特のもの」として評価されています。

『闇の絵巻』のあらすじ

山間部の宿で過ごしている主人公は、月の明るい夜に、ちょうちんを持たずに出かけます。そこには、昼間とは全く違う世界が広がっていました。主人公は、闇に魅了されるとともに、光に嫌悪を抱くようになります。

登場人物紹介

療養のため、都会から山間部の宿に来ている男。闇に触れ、その魅力に気づく。

『闇の絵巻』の内容

この先、梶井基次郎『闇の絵巻』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

闇の魅力、光の恐怖

夜の散歩

主人公の私は、山間の療養地で、闇を愛することを覚えました。夜の散歩に出かけた私は、渓谷の闇に向かって石を投げ込みます。石は柚の木に当たり、闇の中からは柚の匂いが立ち上って来ました。

ある時、私は谷の下流の宿から、上流にある自身の宿に帰っていました。その間には電柱は数えられるほどしかなく、あたりは闇に包まれていました。

橋を渡り、私は道をのぼっていきます。道を覆う竹やぶは、かすかな光でほの白く光っていました。

ある夜、私は自分と同じようにちょうちんを持たずに歩いている男を見つけます。男は、明るいところから闇の中に入っていきました。そして、「自分もあの男のように闇の中へ消えて行くのだ」と感動しました。

回想

街道の闇や、闇よりも濃い樹木の闇は、私の目に焼き付いています。それを思い出すたびに、私は光であふれる都会の夜を汚く思うのでした。

『闇の絵巻』の解説

梶井と闇

梶井は、「光と闇」に関する作品を多く書いた作家です。これには、梶井自身が結核をわずらっており、死を意識していたことが関係していると考えられます。

『冬の日』という作品では、「光による幸福や光への愛」「日が暮れることへの絶望」が描かれました。言い換えれば、光への賛美です。

それは、『冬の蠅』という作品で「太陽や幸福への憎しみ」「夕暮れを待って透き通る心」という風に置き換えられます。つまり、闇を肯定するようになったのです。

そして『闇の絵巻』では、「闇の肯定」を進めて「闇への愛」が語られました。主人公の私が、停電のときに安心したり、前を歩いていた男が闇に消えたのを見て、「自分もあの男のように闇に消えるのだ」と思って喜びを感じたことから読み取れます。

田中美穂「梶井基次郎―光と闇―」(たまゆら 1985年)

『闇の絵巻』の感想

闇の魅力

闇は、不気味でおそろしいものというマイナスイメージで、光は希望や夢というようなプラスのイメージがあります。啓蒙の光とも言いますね。この作品は、こうしたイメージをくつがえす作品です。

私は、ものすごい挫折をしているとか、人には言えない過去を持ってるとか、そういう「闇」を持っている人に不思議と魅力を感じます。そういう意味でも、梶井の考えには共感しました。

また、日本人は闇を大切にする文化を持っています。谷崎潤一郎は『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』というエッセイで、西洋の陶器と日本の漆の器を比較しています。その上で、光を反射して真っ白に輝く陶器を批判し、真っ黒な漆の生み出す闇を賛美しています。

 

闇は視覚を奪うものなので、闇の中では視覚以外の感覚が研ぎ澄まされます。『闇の絵巻』では、真っ暗闇で香り立つ柚の木が登場します。何も見えない分、柚の香りが一層引き立ったような気がしました。

最後に

今回は、梶井基次郎『闇の絵巻』のあらすじと内容解説、感想をご紹介しました。ぜひ読んでみて下さい!

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yuka
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本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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