純文学の書評

【夢野久作】『キャラメルと飴玉』のあらすじ・内容解説・感想

『キャラメルと飴玉』は、似たり寄ったりのキャラメルと飴玉がケンカをするお話です。

今回は、『キャラメルと飴玉』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『キャラメルと飴玉』の作品概要

著者夢野久作(ゆめの きゅうさく)
発表年1922年
発表形態新聞掲載
ジャンル短編小説
テーマ喧嘩両成敗

『キャラメルと飴玉』は、1922年に「九州日報」(12月7日)で発表された夢野久作の短編小説です。「九州日報」は、福岡県を中心に販売されていた地方紙で、福岡県出身の久作はたびたび九州日報で小説を発表しました。

『キャラメルと飴玉』もそうですが、九州日報に掲載される久作の作品は、擬人化したものやユーモアに富んだものが多いです(『キューピー』『きのこ会議』など)。

『キャラメルと飴玉』には、お菓子同士の可愛らしいケンカが描かれています。Kindle版は無料¥0で読むことができます。

著者:夢野久作について

  • 日本の探偵小説三大奇書『ドグラ・マグラ』の著者
  • 書簡体小説を書いたり、独白体を用いることが多い
  • 小説家、詩人、禅僧、陸軍の軍人、郵便局長という経歴を持つ

夢野久作は、奇抜・幻惑という言葉がぴったりな人物で、他の作家とは一線を画しています。三大奇書に分類され、「読むと精神に異常をきたす」という衝撃的な広告文がつけられた『ドグラマグラ』を書きました。

久作の作品では、書簡体(手紙の連なりで展開していく手法)や、独白体(主人公が1人でつぶやくように語る手法)がよく用いられています。また、久作は様々な職業を経験した特異な作家です。

『キャラメルと飴玉』のあらすじ

お菓子箱の中で、キャラメルと飴玉がケンカを始めました。他のお菓子たちも加勢し、収拾がつかなくなってしまいましたが、意外な形で終わりを迎えます。

登場人物紹介

キャラメル

飴玉にケンカを売る。日本のお菓子をバカにする。

飴玉

キャラメルにケンカを売られる。西洋のお菓子をバカにする。

お母さん

お菓子箱を開けた坊っちゃんのお母さん。

『キャラメルと飴玉』の内容

この先、夢野久作『キャラメルと飴玉』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

お菓子の東西戦争

お菓子のケンカ

お菓子箱の中で、キャラメル飴玉がケンカを始めました。キャラメルは、「俺なんぞちゃんと着物を着て四角いおうちにはいっているんだぞ」と飴玉を挑発します。飴は、「日本にいるなら日本らしい名前をつけろ」と言い返します。

キャラメルは、「牛乳が入っているから貴様よりずっと上等だ」と言い、飴は「おれだってニッキがはいってるんだ」と対抗します。

そのうちに、ミンツやボンボン、チョコレート、ドロップスなどのキャラメルの仲間や、元禄や西郷玉、花林糖、有平糖(あるへいとう。飴の一種)などの飴玉の仲間も加勢して取っ組み合いになります。そして、皆くっついて動けなくなってしまいました。

喧嘩両成敗

お菓子箱を開けた坊っちゃんは、「お母さん。お菓子が喧嘩をしている」と叫びました。

お母さんは、「一緒にしまってはいけないと言ったではありませんか。私がこわして上げるから、食べておしまいなさい」と言って、お菓子のかたまりを金槌で壊してしまいました。

『キャラメルと飴玉』の解説

語り手は誰?

『キャラメルと飴玉』の語り手は、普通に考えれば物語の全体を俯瞰(ふかん)している、完全な第三者です。しかし、語り手はお菓子箱を開けた「坊っちゃん」だと考えることもできると思います。

根拠は、キャラメルと飴玉のケンカが実際に起きているものではなく、単なる想像だとしたときに、そうした想像をしうるのは坊っちゃんだけだからです。

飴やキャラメルが、お菓子箱の中でいつの間にか1つの塊になっている光景を「ケンカした」とみなすのは、非常に子供らしくてかわいい発想だと思います。

『キャラメルと飴玉』の感想

オチが面白い

1000文字に満たないショートショート(小説の中でも特に短いもののこと)ですが、会話文が効果的に用いられていて、筋の通った物語になっています。

キャラメルが主導になって話を広げ、それに飴玉が言い返すという形式なので、若干キャラメルの方が優位に立っているような気がしますが、両者は仲間を巻き込んで大乱闘を繰り広げます。

 

またオチが面白く、まさに「母は強し」という言葉がぴったりの終わり方だと思いました。「九州日報」に掲載されている久作の作品は、この手の終わり方をする傾向にあります。

最初に小さい世界での出来事が描かれていて、最後にその小さい世界を凌駕(りょうが)する大きい世界の住人によって、ぷつりと物語が断ち切られるような終わり方です。

後を引く感じがなく、潔ささえ感じるこの締め方は、久作の持ち味なのではないかと思います。

最後に

今回は、夢野久作『キャラメルと飴玉』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

あまり読解に頭を使わないため、休憩がてらに読むような小説だと思いました。ぜひ読んでみて下さい!

↑Kindle版は無料¥0で読むことができます。

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yuka
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「純文学を身近なものに」がモットーの社会人。谷崎潤一郎と出会ってから食への興味が倍増し、江戸川乱歩と出会ってから推理小説嫌いを克服。将来の夢は本棚に住むこと!
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