純文学の書評

【石原慎太郎】『太陽の季節』のあらすじ・内容解説・感想

強気な姿勢に賛否両論あるものの、政治家として活躍した石原慎太郎の代表作です。彼を知らない人はいませんが、その作品を読んだことがあるという人はそう多くはないのでしょうか。

今回は、石原慎太郎『太陽の季節』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『太陽の季節』の作品概要

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著者石原慎太郎(いしはら しんたろう)
発表年1956年
発表形態雑誌掲載
ジャンル短編小説
テーマ堕落した生活

『太陽の季節』は、東京都知事を務めた経験がある石原慎太郎の著書です。倫理性に欠ける内容が若者を中心にヒットし、「太陽族」(夏の海辺で享楽的な遊びにふける不良集団のこと)という言葉が生まれるほど、社会に大きな影響を与えました。

1956年に映画化されており、石原慎太郎の弟である石原裕次郎が出演しています。

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『太陽の季節』は、『Season of Violence』というタイトルで英語訳されています。Kindleで読むことができます。

著者:石原慎太郎について

  • 作家、政治家
  • 一橋大学法学部卒業
  • 『太陽の季節』で文壇デビュー
  • 過激な発言で支持を獲得

石原慎太郎は、日本の作家、政治家です。一橋大学在学中に『太陽の季節』で第34回芥川賞を受賞し、文壇デビューしました。政治的には、歯に衣着せぬ発言で賛否両論を巻き起こしました。

『太陽の季節』のあらすじ

高校生の竜哉は、ボクシングに熱中しながら自堕落な生活を送っています。そんなとき、竜哉は町でナンパした英子という女性と仲良くなります。

2人は惹かれ合いますが、やがて竜哉は英子をぞんざいに扱い始めました。英子が失望していた矢先、英子の妊娠が発覚してしまいます。

登場人物紹介

竜哉(たつや)

ボクシングと酒と女とギャンブルにしか興味のない主人公。借金を抱えて亡くなった父のようにはなりたくないという強い思いを抱いている。

英子(えいこ)

竜哉に声をかけられたことがきっかけで付き合い始める。恋人を戦争で失ったという悲しい過去の持ち主。

『太陽の季節』の内容

この先、石原慎太郎『太陽の季節』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

不良文学

竜哉と英子

麻雀の賭け金を取り立てに、ボクシング部のマネージャーに会いに行った高校生の竜哉は、ふざけて試合をして負けてしまい、ボクシングの面白さに目覚めます。

ボクシングに夢中になる一方、仲間たちと町へ向かった竜哉は、帽子屋の3人組の女性に声をかけることになりました。3人組の中で、竜哉は特に英子という女性と親しくなります。英子は後日、約束通りにボクシングの試合を見に来てくれ、2人の仲は深まりました。

英子の恋愛観

やがて、竜哉と英子は深い関係になりました。しかし、英子にとって竜哉は数多くの男性のうちの1人に過ぎません。英子はかつて、好きになった男性を戦争で亡くしたことがきっかけで、本気に誰かを愛することが出来なくなってしまいました。

そのせいで、空虚な恋愛に走るようになったのです。そんな英子がクラブで見知らぬ男と踊っているのを見て、竜哉はショックを受けます。

立場の逆転

竜哉と英子は、夏にヨットで海に遊びに行きました。そこで、英子はようやく竜哉を心から愛せるようになりました。しかし、今度は英子が竜哉に夢中になればなるほど、竜哉は英子に対して冷たい態度を取るようになります。

竜哉はわざと他の女性と遊び、英子を兄にお金で譲り渡すようなことさえします。英子は、竜哉が本気で自分のことを嫌っているわけではないと気づいていたので、素直になれない竜哉の行動を悲しみます。

英子の死

英子が竜哉の子を妊娠していたことが分かり、彼女は中絶手術を受けます。しかし手術は失敗して、英子は亡くなってしまいました。竜哉は葬式で、英子の自分に対する命懸けの復讐を感じ、遺影に香炉を投げつけて泣きました。

竜哉は学校のジムへ行き、パンチングバッグを打ちながら、ふと英子の「なぜあなたは、もっと素直に愛することが出来ないの」という言葉を思い出します。竜哉はその時に浮かんだ英子の笑顔の幻影を、夢中で殴りつけました。

『太陽の季節』の解説

攻撃的な竜哉

乱暴な性格の竜哉に快感を与えるものは、サンドバッグ・ボクシングの相手・英子だと言えます。どれも「やっつける」対象だからです。

物語で竜哉が最初に殴るのはサンドバッグで、その次は相手選手、最後はまたサンドバッグです。攻撃対象が物→人→物と変化していますが、これは竜哉の女性に対する接し方を表しています。

竜哉は最初、女性を金で買う「物」として扱い、英子を通じて、「人」への愛を学びます。しかし、攻撃的な性格が作用して「素直に愛すること出来ない」竜哉は、再び女性を「物」として見てしまうのです。

『太陽の季節』の感想

精神的な豊かさ

非行が流行らない現代では、正直あまり受け入れられないのではないかと思いました。ただ、竜哉が単に非行に走っているのではなく、暮らしには困らない裕福な環境で、退屈でやることがないために享楽的な生活を送っているのだということが、興味深いです。

物質的には満たされているのに、精神的に満たされていないために虚しさを感じるという、現代人が抱える問題を指摘していると思いました。

非道徳的な内容ということには変わりないので、今も昔もいろいろな評価をされる作品ですが、当時の日本の若者像を知るのには良い小説だと感じました。

最後に

今回は、石原慎太郎『太陽の季節』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

『太陽の季節』は『太陽の季節』という短編集に収録されています。他の話もナンパや女遊びがテーマの小説ですが、短い作品が多いので手がつけやすいと思います。政治家として活躍した著名人の小説なので、ぜひ読んでみてください!

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yuka
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「純文学を身近なものに」がモットーの社会人。谷崎潤一郎と出会ってから食への興味が倍増し、江戸川乱歩と出会ってから推理小説嫌いを克服。将来の夢は本棚に住むこと!
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