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サクっと読める本!太宰治の短編小説おすすめ4選

太宰治は、若年期のショッキングな作品や、彼自身の壮絶な経験が契機となり、女性に根強いファンが多い作家です。教科書にも載っている彼の作品に、興味はあるけど読むきっかけがないと思っている人も多いのではないでしょうか。

そんな人におすすめなのが、短編です。太宰の作品には短編小説が多くあります。文庫サイズの短編ならポケットにも入って気軽に持ち運べますし、いつでもどこでも読むことができます。

今回は、スキマ時間にサクっと読める太宰治のおすすめの短編小説を4冊ご紹介します。

太宰治の短編小説のあらすじを結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるため、ご注意ください

人間失格

一言で言うと

「異端者の苦悩」

葉蔵は、物心がついた時から他人が考えていることが分からない少年でした。だからこそ、常に相手の顔色をうかがい、嫌われないように必死におどけて生きてきました。彼はその悩みを誰にも打ち明けられず、1人で抱え込んでいたため、強い孤独を感じるのです。

葉蔵は、芸術的センスや嘘とはいえ人に好かれる才能を持っていたので、もう少し物事が違う風に動けば、彼は芸術家や愛される存在として大成していたかもしれません。時代や環境、葉蔵の優しくも弱い心が複雑に絡み合い、葉蔵は「阿鼻叫喚」な人生を歩みます。

あらすじ

他人が何を考えているのか分からない彼にとって、人間は理解しえない恐ろしい生き物でした。彼はその恐怖を消し去って人に好かれるために、自分を偽って他人を笑わせるお調子者として生きてきました。

彼はそれが演技だと皆に知られることを何よりも恐れて、誰にも理解されない孤独を感じながら成長します。

 

高等学校に進んだ葉蔵は、酒や煙草、左翼思想にのめり込みます。そうしている間は、恐怖がおさまるからです。しかし学校に行っていないことが故郷の親に知られ、遊ぶお金も無くなったため、彼は出会ったばかりの女性と入水自殺未遂をします。

その後も葉蔵の遊び癖や自殺未遂は改善されなかったため、彼は知人に精神病院に連れて行かれます。彼は当初、療養所に行くのだと思っていました。しかし、他人から精神病院に行くような狂人だと思われていたことに深く傷つき、自分は「人間失格」だと悟ります。

(これには、実際に太宰が精神病院に送られた時のショックや絶望などの経験が深く関わっています)死ぬに死ねず、夢も希望も、不幸も幸福も無い人生を振り返って、「毎年1歳年を取っている」という当たり前のことを悟り、葉蔵の物語は終わります。

【太宰治】『人間失格』のあらすじ・内容解説・感想|名言付き「世界で最も売れている日本の小説」とも言われている『人間失格』。夏目漱石の『こころ』と発行部数を競うほど、長年愛されている作品です。 ...

感想

葉蔵は、人の懐に入るのが実にうまい人です。特に小説に登場する女性は、おどける葉蔵が何か問題を抱えていることを見抜きます。そして心を許しているようで決して許さないミステリアスな彼に、多くの女性は魅了されていきます。

それに加え「おそろしく美貌」な葉蔵は、近づきやすさと、それなのに決して他人が踏み込む事を許さない鋼の心と、弱さを武器に女性を惹きつけます。遊びに溺れるどうしようもない葉蔵に、彼女らはなぜか母性本能を掻き立てられるのです。

ヒモに振り回されたことがあったり、なぜかそういう人を放っておけなかったりする女性は、彼に惹かれる心理に強く同意できると思います。

ページ数155ページ
出版年1952年
出版社新潮社
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新潮社
¥308
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斜陽

一言で言うと

滅びの美

第二次世界大戦敗戦後、古い感覚を捨てきれない母と、時代の流れに乗って道を切り開いて行こうとする強いかず子の対比がなされています。弱い人間として描かれている直治や上原と比較したとき、打たれ強いかず子の輝かしさが目を惹く作品です。

あらすじ

第二次世界大戦敗戦後の日本で、主人公のかず子は徐々に没落していく華族の一員として生きています。彼女は畑仕事や労働に対してさほど抵抗はありませんが、彼女の母は貴族であったことにいつまでも固執し、現実を見ようとしません。

弟の直治は酒を飲んで、友人で既婚者の上原と遊んでばかりいる放蕩者です。母の体調が悪くなり、かず子は焦ります。そんな中、かず子は一度諦めた上原と結ばれて幸福を感じますが、弟の自殺をきっかけに周囲の人と距離を置くようになります。上原も例外ではありません。

かず子はまた一人になってしまいますが、彼女は上原の子供を宿していたため、少しの希望を持っていました。彼女は、「没落貴族で不倫相手の子を持ったシングルマザー」という差別されかねない経歴を持ちながらも、強く生きることを決意します。

感想

過去の栄光にしがみつき、変化しないまま亡くなったかず子の母が印象的でした。彼女の生き方は、反面教師として受け取ることができると思います。

「俺・私が若いころは~」と言って現実を見ない人は、身を滅ぼすのだと思いました。時代の流れに順応して、ITの勉強をするとか最新の技術トレンドを追うとか、そういった努力をしないと、新興や若手に追い抜かれてしまうのですね。

まさに現代の縮図と言える小説でしょう。この物語から学べることは多いです。

ページ数256ページ
出版年2003年
出版社新潮社
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文藝春秋
¥781
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走れメロス

一言で言うと

「メロスが勇者になる話」

『走れメロス』は、平凡な村人がひょんなことから英雄になった物語です。

ただの村人だったメロスは、セリヌンティウスのために走り抜きます。その先には、強固な友情と厚い信頼があるからです。処刑を恐れず、身体を壊してまで友を想い続けたメロスは、まさに勇者と言えます。

あらすじ

羊飼いのメロスは、妹の結婚式を挙げるため、シラクサの街に出かけます。すると、昔は活気に満ちていたシラクスは寂れていました。

不思議に思ったメロスは街の人に理由を聞き、王様が人間不信に陥ったために人々を虐殺していることを知ります。そんな王に怒りを覚えて歯向ったメロスは、処刑を宣告されてしまいました。

メロスは妹の結婚式のために、3日後の日没まで待って欲しいと頼みます。そしてセリヌンティウスという親友を人質として王の前に差し出しました。人間不信の王は、メロスが親友を裏切って逃げるつもりなのだと思い、それを許しました。

メロスは一睡もせず走って家に戻り、妹の結婚式を挙げました。そして最後の1日の明け方、目を覚ましたメロスはシラクスへ向かいました。しかし川の濁流を泳ぎ、襲ってきた山賊と戦ったメロスは、限界を迎えて動けなくなってしまいます。

 

メロスは一度は諦めかけましたが、それでも自分を信じて待っている親友のもとへ走ります。血を吐いてボロボロになりながらも、彼は約束の時間ぎりぎりにセリヌンティウスのもとにたどり着きました。

セリヌンティウスは、一度だけメロスを疑ったことを白状し、メロスもまた一度だけ友を裏切りかけたことを告白します。2人は一度ずつ互いの頬を殴り、熱く抱き合います。この美しい友情を見た王はメロスを無罪にし、改心するのでした。

感想

子供向けの作品なので難しい表現は無く、短文の連続で読みやすいです。短い文はスピード感を増す効果があるため、メロスが帰る場面は読んでいる方が焦ってしまいます。まさに手に汗握る生きたシーンです。

太宰=『人間失格』というイメージを持っている人は、「太宰ってこういうのも書けるんだ」という感想を持つかもしれません。『人間失格』は人間不信の側にフォーカスした作品で、『走れメロス』はその逆に焦点を当てた作品だからです。

王は友情と信頼に感動して人間不信を克服しました。子供向けだからこそ、このように単純な構成なのですが、そう簡単にはいかないことを示したのが『人間失格』だと言えます。

ページ数236ページ
出版年2007年
出版社講談社
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¥440
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桜桃

一言で言うと

「亭主失格、親失格、人間失格」

あらすじ

主人公の小説家は、妻と三人の子供と暮らしています。彼は家庭でいつも冗談を言って、場を和ませるように努めています。彼は生真面目で、気まずい場の空気に耐えられない性質の人間だからです。

どんなに苦しくても、表面では常に明るく振る舞っているので、彼は次第にそのギャップに頭を悩ませます。そして彼は、ふとした時に自殺を考えるほど弱い心の持ち主です。

夫婦は一見幸せな家庭を築きながらも、お互いに家庭に対して苦痛を感じていることに気付いています。それを無視して、表面上は何事もないかのように生活をしているのです。

懸念点は、長男の発達が遅いことです。主人公は、もしかしたら長男には障害があるのではないかという不安に駆られ、小心者の性格がそれを助長し、やけ酒をするようになります。

 

また、水面下に入っていた夫婦間の亀裂がとうとう表に出てきました。主人公は臆病なので暴力こそ振るいませんが、2人は陰湿に腹を探り合うようになります。そしてその雰囲気に耐えられなくなった主人公は、妻と子供を置いて逃げ出しました。

逃げた先は「女友達」がいる酒場です。彼は彼女に桜桃をもらいます。主人公は、贅沢品の桜桃を持って帰れば子供は喜ぶはずだと思いますが、1人で全部食べました。親の方が子供より弱いので、大事にされないといけないと考えるからです。

感想

「子供より親が大事」と聞いて、皆さんはどう思うでしょうか。「そんなの親じゃない!」「子供は宝じゃないか!」という感想を持つでしょうか。主人公は、一般的に言われる「子供が大事」とは真逆の考えを持っています。彼の心の弱さから来るものなのでしょうが、私は斬新で面白いと思いました。

親としての顔だけでなく、1人の女として、1人の男としての顔も持っていいのではないかと思うからです。キャリアを諦めたり、余暇を犠牲にしてまで子供に尽くすことに正直疑問を感じてしまいます。

時間を奪う厄介者という認識にすり替わって、子供を嫌いになってしまうのではないかと思うからです。子供を大切にするためにも、まずは親の自分を大切にする方が重要なのではないかと私は考えます。

社会に蔓延している(と思われる)「献身的な親が良い」という考えは捨てた方がいいのではないでしょうか。『桜桃』の主人公のように育児放棄をするのでは困りますが、自分のことも労わりながら、無理のない子育てする親になりたいと思えた小説でした。

ページ数128ページ
出版年2011年
出版社角川春樹事務所
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¥23
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最後に

今回は、空いた時間にサクっと読める太宰治のおすすめの短編小説をご紹介しました。電車でSNSをチェックする時間を小説を読む時間に置き換えるだけで、ぐっと有意義な時間に変わると思います。

30分もあれば読める作品が多いので、ぜひお出かけのお供に持って行ってみてはいかがでしょうか。一冊の本の良し悪しを決めるのは長さではありません。短編に親しみがない方は、これを機に手に取ってみて下さい。

ABOUT ME
yuka
yuka
本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。
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