純文学の文豪図鑑

太宰のことがまるわかり!太宰治のプロフィール・作風をご紹介

皆さんは、太宰治という作家にどのようなイメージを持つでしょうか?『人間失格』や自殺のインパクトが強いため、なんとなく暗いと考える人が多いと思います。しかし、実は明るい小説も多く書いていたりする作家です。

今回は、太宰治のプロフィールと作風をご紹介します!

太宰治の基本データ

本名津島修治(つしま しゅうじ)
出身地青森県
生きた時代明治末~昭和前期(敗戦頃まで)
代表作『女生徒』『走れメロス』『斜陽』『人間失格』『グッド・バイ』
流派/同時代作家無頼(ぶらい)派/坂口安吾、伊藤整
尊敬した人芥川龍之介
性格(主観入ってます)弱虫
キーワード(主観入ってます)コンプレックス、ユーモア、自殺、薬物、自己破壊、エゴ、ダメンズ

太宰治のプロフィール

幼少期

太宰治は、1909年に青森県津軽郡の大地主の家に生まれました。「太宰が津軽に生まれたこと」「家がお金持ちだったこと」「六男だったこと」は、太宰の生涯と文学を理解するキーワードになります。

津軽は、本州の最北端にあり、昔からエゾの国と呼ばれていた特殊な場所です。本州の文化とは一風変わった呪術的風習(イタコ信仰、オシラさま、ねぶた絵など)があったり、明るくて開放的な雰囲気もあります。

幼い頃に親しんだこのような文化は、太宰の作品に影響を与えています。

青年期

家がお金持ちであるため、太宰は豪華な家で使用人に囲まれながら育ちました。ところがある時、自分の生活が、貧しい友達の家からお金を巻き上げることで成り立っていることを知り、悩み始めます。

高校卒業後、東大のフランス文学科に入学した太宰は、マルキシズムの運動に参加しました。マルキシズムは、平たく言うと「金持ちはいらない」という思想です。太宰がこの運動に参加すようになったのには、太宰が六男であったことが関係しています。

当時は家父長制が重んじられていたため、子供の中で大切にされていたのは跡継ぎになる長男だけです。六男の太宰は、いてもいなくても良い存在だったため、家に居場所がありませんでした。

そのため、よそ者意識を強く抱くようになりました。そして、跡取りとして真面目に生きる兄たちとは違う、自分の信じる道を生きようと決めたのです。

20代

太宰は運動に参加するものの、革命のためなら手段を選ばない政治活動に、徐々についていけなくなります。そして、「自分は金持ちの血を引いているから、純粋な革命家にはなれないのだ」と悟り、「自分は滅びゆく大地主の息子だ」と絶望します。

そして、自らを亡ぼすことが社会への奉仕だと思い、21歳のときにその夜に知り合った女性と入水自殺をしました。しかし、太宰は死に損なってしまったため、亡くなった女性に罪悪感を抱くようになります。

 

その後、太宰は作家として注目されるようになりますが、26歳のときに再度自殺を図ります。しかし、またしても失敗してしまい、太宰はその心の弱さから麻薬中毒になりました。

太宰は、自分を滅ぼすことで自身が「悪の見本」となり、いわば人々の反面教師になろうとしたのです。ところが、そんな太宰を心配した周囲の人は、太宰をだまして精神病院に入院させました。

太宰は、自分が真面目にやっていたのに、周囲の人には狂人だと思われていたことにショックを受けます。この経験をもとに、太宰は『HUMAN LOST』を執筆しました。これは、晩年の『人間失格』に繋がる小説です。

その後、太宰は妻と心中を図りますが、またしても未遂に終わりました。

30代

29歳のとき、太宰はそれまでの生活を見直して、再出発をします。この頃の作品は、それまでの自己破壊的な性格とは打って変わって、明るく健康的なものばかりです。

太平洋戦争末期、多くの作家が創作活動を辞める中、太宰は精力的に作品を発表しました。そして戦後、太宰の人間や社会への絶望はますます深まり、『人間失格』を執筆します。そして、39歳の誕生日を迎える1週間前、太宰は愛人と入水自殺を遂げました。

遺体は、1948年の6月19日(太宰の誕生日)に発見され、この日は太宰の短編『桜桃』から取って「桜桃忌」と名付けられました。

奥野健雄『人間失格』解説(1961年 新潮社)

太宰治の作風

太宰の作品は、一般的に前期・中期・後期という風に分けられ、作風が変化していきます。それぞれの時期の傾向と、そのころに書かれた小説をご紹介します。

前期

政治活動での挫折、実家からの勘当、芥川賞落選、精神病院送り、薬物乱用などさまざまな困難を経験したこの頃の太宰は、破滅的な小説を書きました。生への恐怖が小説に表れています。

この時期の作品は、『道化の華』『ロマネスク』『ダス・ゲマイネ』『HUMAN LOST』など。

『ダス・ゲマイネ』

ページ数33ページ
出版年不明
出版社Amazon Services International, Inc.

中期

前期の退廃的(道徳や健全さに欠ける事)な生活から一転して、家庭を築いて健康的な生活を送り始めたのがこの頃です。私生活が安定していたため、のびのびとした自由で明るい作風なのが特徴です。

この時期の作品は、『富獄百景』『女生徒』『女の決闘』『駆込み訴へ』『走れメロス』『御伽草子』など。

『走れメロス』

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ページ数558ページ
出版年2000年
出版社文藝春秋

後期

太宰は、戦争が終わっても少しも変わらない、人間のケチくささやエゴ、古さに絶望します。そして、再び前期のような破滅的な作風に戻ります。特に、自分の内面をえぐり、命がけで書かれた『人間失格』は、太宰の代表作です。

この時期の作品は、『ヴィヨンの妻』『斜陽』『桜桃』『人間失格』『グッド・バイ』など。

『人間失格』

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ページ数192ページ
出版年2006年
出版社新潮社

最後に

今回は、太宰治のプロフィール・作風をご紹介しました。

誰にも理解されず、常にアウトサイダーだった太宰の孤独は、想像を絶するものだったでしょう。このことを理解すると、また違う風に作品を読むことができると思います!

ABOUT ME
yuka
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「純文学を身近なものに」がモットーの社会人。谷崎潤一郎と出会ってから食への興味が倍増し、江戸川乱歩と出会ってから推理小説嫌いを克服。将来の夢は本棚に住むこと!
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