純文学の書評

【夢野久作】『ビール会社征伐』のあらすじと内容解説・感想

金は無いがビールが飲みたい――そんな酒飲みたちが取った行動に思わず笑ってしまう『ビール会社征伐』。

今回は、夢野久作『ビール会社征伐』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!

『ビール会社征伐』の作品概要

著者夢野久作(ゆめの きゅうさく)
発表年1935年
発表形態雑誌掲載
ジャンル短編小説
テーマ滑稽

『ビール会社征伐』は、1935年8月に雑誌『モダン日本』で発表された夢野久作の短編小説です。経営難に陥った新聞社に勤める酒豪たちが、なんとかして酒を手に入れようとする様子が回想体で描かれています。

Kindle版は無料¥0で読むことができます。

著者:夢野久作について

  • 日本の探偵小説三大奇書『ドグラ・マグラ』の著者
  • 書簡体小説を書いたり、独白体を用いることが多い
  • 小説家、詩人、禅僧、陸軍の軍人、郵便局長という経歴を持つ

夢野久作は、奇抜・幻惑という言葉がぴったりな人物で、他の作家とは一線を画しています。三大奇書に分類され、「読むと精神に異常をきたす」という衝撃的な広告文がつけられた『ドグラマグラ』を書きました。

久作の作品では、書簡体(手紙の連なりで展開していく手法)や、独白体(主人公が1人でつぶやくように語る手法)がよく用いられています。また、久作は様々な職業を経験した特異な作家です。

『ビール会社征伐』のあらすじ

経営難におちいっている九州日報社では、毎月きちんと給料が支払われません。そのせいで社員はろくに酒を飲むことができません。社内は「どうにかしてうまい酒を飲むことができないか」という話でもちきりです。

そんなとき、九州の実業庭球界で名をはせていたビール会社にテニスの試合を申し込めば良いのではないかという話になりました。もちろん目的は、試合の後に振舞われるであろうビールです。

果たして、社員たちは無事ビールにありつくことができるのでしょうか?

登場人物紹介

筆者

九州日報社の編集部員。酒が飲めない。

九州日報社社員

九州日報社の編集部員。酒豪ぞろい。

麦酒会社

テニスコートや九州の一流の選手を持つビール会社。新聞へ掲載されることを目的として、九州日報社からの試合を受ける。

『ビール会社征伐』の内容

この先、夢野久作『ビール会社征伐』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。

一言で言うと

滑稽譚

決闘

ある夏、福岡の九州日報社という新聞社は経営難におちいっていました。酒豪ぞろいの編集部ですが、月給がきちんと支払われないためろくに酒を飲めていません。

そこで、九州随一の選手を抱える某ビール会社に対戦を申し込むことにしました。ビール会社は、試合のことが新聞に載れば広告になると考え、試合を受けることにしました。

しかし、編集部員にテニスを知っている人いません。筆者は部員たちにルールを説明しましたが、彼らは聞く耳を持たず「やってみたら、わかるだろう」と言う始末です。

念願叶って

そして試合当日、筆者はいろいろなところから借りてきたボロボロのラケットを持って会場に向かいます。

ビール会社の選手はそろいの新しいユニフォームを着ているというのに、編集部員は街頭のアイスクリーム屋のような服装をしていたり、赤い猿又を身につけていたり、目も当てられない風貌です。

ラケットの持ち方も知らず、自分が勝ったのか負けたのかさえ分からない散々な試合を繰り広げた編集部員でしたが、試合後にはお待ちかねのビールが振舞われました。編集部員たちはコップからジョッキに持ち替え、心行くまでビールを飲み干します。

翌日、新聞に試合の記事が出たかどうか筆者は記憶していません。

『ビール会社征伐』の解説

笑いどころ

『ビール会社征伐』は「筆者」が体験した笑い話です。そして、この作品の肝は筆者が唯一の下戸である+真面目ということだと思います。

 

試合が決まったとき、筆者は編集部員にルールを教えようと原稿用紙を広げました。しかし、誰もが「何とかなる」と耳を傾けませんでした。また、当日に全員分のラケットを調達したのも筆者です。

こうした編集部員のいい加減さから、彼らの関心がいかにテニスの試合ではなく試合後のビールに向けられているかが分かります。

建前として、一応はきちんとテニスをしようとする筆者との比較を通して、編集部員たちの適当さが浮き彫りになるところに面白さがあります。

また、ビール目当てで試合を申し込む図々しさや、腹の底がビール会社の人にバレてもそれを隠さない図太さが、軽快でおおらかな笑いを誘います。

『ビール会社征伐』の感想

真面目ときどきユーモア

『ビール会社征伐』は、久作の振り幅の大きさを改めて実感した作品です。『ドグラ・マグラ』のような、理解が追いつかない凄まじい小説と作者が同じとはにわかに信じられません。

また、「ビール会社」と「征伐」という絶対に結びつかない単語をあえてつなげたことで生まれる、ミスマッチさからくる笑いが秀逸です。

久作の作品には印象的なタイトルの作品が多くあり、キャラメルと飴玉のケンカを描いた『キャラメルと飴玉』や、きのこの会合の様子を描いた『きのこ会議』など、目を引く面白いものが多くあります。

最後に

今回は、夢野久作『ビール会社征伐』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。

ぜひ読んでみて下さい!

↑Kindle版は無料¥0で読むことができます。

ABOUT ME
yuka
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「純文学を身近なものに」がモットーの社会人1年生。谷崎潤一郎と出会ってから食への興味が倍増し、江戸川乱歩と出会ってから推理小説嫌いを克服。将来の夢は本棚に住むこと!
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