純文学の流派

新思潮(新理智・新技巧)派とは?代表作家を含めて分かりやすく解説

中学や高校の日本近代史の授業で、訳も分からず「新思潮派」という単語を覚えた人は多いのではないでしょうか?

今回は、新思潮派を代表作家を含めて分かりやすく解説します!

新思潮派の概要

新思潮派は、明治40年頃から流行っていた自然主義に対抗する形で登場しました。「新思潮」は、東大の作家志望の学生による雑誌です。小山内薫(おさない かおる)が出した第一次、谷崎潤一郎が出した第二次、芥川や菊池寛を輩出した第四次が有名です。

最初にテーマを決めてから、小説を展開するテーマ小説や、古典を題材にした小説など、入念な構想のもとのフィクションを目指しました。感情より理性が勝った作風が特徴的で、熱狂や耽溺とは対極にあり、常に冷静な姿勢を保ちます。

自然主義は、作家の実人生をありのままに書くので、事実を加工したり、脚色を加えてはいけません。しかし、新思潮派は物語を作りこんで徹底的にフィクションを構築するので、その点で自然主義とは違います。自然主義については、以下の記事をご参照ください。

自然主義とは?私小説との関連をわかりやすく解説|代表作家もご紹介自然主義は、日本の近代小説の基礎を作った大きな流れです。 今回は、自然主義と私小説の関連を解説し、自然主義作家をご紹介します! ...

新思潮派の代表作家

芥川龍之介

芥川の本質は、芸術に価値を置く芸術至上主義です。これは、生活の事実を描くことに注力する自然主義と相反する考え方です。『戯作三昧(げさくざんまい)』『地獄変』に表れています。

しかし、大正12年からは「保吉(やすきち)もの」と呼ばれる私小説を書き始め、徐々にスタイルを変えていきます。

『地獄変』

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発表年1918年
カテゴリ短編小説
ジャンル ‐

平安時代の絵師が、火だるまになって苦しむ娘の姿を見て、芸術的な美を感じる様子が描かれる作品です。芥川の芸術至上主義が前面に表れています。

【芥川龍之介】『地獄変』のあらすじ・内容解説・感想|感想文のヒント付き芥川龍之介は、古典を題材にした作品を書くことが多い作家です(『羅生門』『鼻』など)。『地獄変』は、説話集『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀」...

久米正雄(くめ まさお)

新思潮派の中で、真っ先に名声を挙げた人物です。弱冠23歳で戯曲『牛乳屋の兄弟』で有名になり、『学生時代』という短編集を発表して作家としての地位を確立しました。自身の失恋を題材にした『破船』は、久米の代表作です。

『学生時代』

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発表年1918年
カテゴリ短編集
ジャンル ‐

『受験生の手記』『艶書』『選手』『説法』等、久米の学生生活が題材となった短編が収められています。

菊池寛(きくちかん)

新聞小説を、娯楽のものとして普及させることに成功した作家です。徹底的な心理分析を通して、ありのままの人間を描く特徴があります。代表作は、『無名作家の日記』『恩讐の彼方に』『蘭学事始』など。

『恩讐の彼方に』

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発表年1919年
カテゴリ短編小説
ジャンル感動

強盗をして生計を立てていた市九郎は、これまでの悪事を償うべく出家し、全国を旅します。その過程で、市九郎は旅の難所である岩場を削り、犠牲者を減らそうと奮闘します。

最後に

今回は、新思潮派を代表作家を含めて解説しました。同じ新思潮派の中でも、振り幅大きくて面白いので、ぜひご紹介した作品を読んでみて下さい!

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yuka
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「純文学を身近なものに」がモットーの社会人。谷崎潤一郎と出会ってから食への興味が倍増し、江戸川乱歩と出会ってから推理小説嫌いを克服。将来の夢は本棚に住むこと!
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