小説家がどのように生まれるか、皆さんはご存知でしょうか?漫画で描かれるように、出版社に持ち込んで審査してもらうのではありません。そのようなケースも無いことはないのですが、ほとんどの場合は公募による新人賞で将来の小説家を発掘します。
今回は、倍率で比較した新人賞の一覧を作成しました。
新人賞について
応募数はだいたい1500~2500作品ほどで、そのうち受賞するのは1~2名です。倍率でいえば1000を超える非常に難易度の高い賞です。
どの賞も、第一線で活躍している作家4〜5名を選考委員としています。彼らが応募された全作品を読むということはありません。
一次、二次と選考されていき、最終的に残った数冊を選考委員が読んで受賞作が決められます。最初の数ページで残るか落ちるかが決まってしまうので、人の心を掴む書き出しをすることがカギになりそうです。
文學界新人賞
『文學界』を刊行する文藝春秋が運営する新人文学賞です。分量は400字詰め原稿用紙で70枚以上150枚以下(2万8000字~6万字)です。受賞者には万年筆と50万円が贈呈されます。
選考委員は批評家の東浩紀氏や、小説だけでなく音楽・舞台・テレビとマルチに活躍する川上未映子氏など計5名です。応募総数に対して新人賞を受賞する倍率は、約1275倍です。
文學界新人賞は、受賞作が0作品の時もあれば3作品の時もあったりと、回によってばらつきがある印象です。年に2回開催されます。
群像新人文学賞
『群像』を刊行する講談社が、1958年に創設した新人文学賞です。2014年までは、小説部門と評論部門の2部門に分かれていましたが、2015年からは小説のみが選考対象となり、評論部門は「群像新人評論賞」と名前を変えて独立しました。
分量は400字詰め原稿用紙70枚~250枚以内(2万8000字~10万字)で、受賞者には50万円が贈呈されます。選考委員は前衛的な作風が特徴的な高橋源一郎氏を含む計5名です。
倍率は約1544倍で、年に1回開催されます。過去10回の結果を見ると、毎回1~3作品は受賞しているので、コンスタントに選ばれていると言えます。
文藝賞
『文藝』を刊行する河出書房新社が1962年に設立した新人文学賞です。「文藝」という雑誌は、若い世代をターゲットにしているということもあって一味違った作品が多く掲載されています。
そのためか公式サイトに「既成の枠にとらわれない、衝撃的な作品をお待ちしております。」と記載されているので、他とは違う独自性が自慢の作家におすすめです。
分量は400字詰め原稿用紙100枚〜400枚(4万字~16万字)で、受賞者には万年筆と50万円が贈呈されます。選考委員は『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香氏を含む計4名が務めています。倍率は約1430倍で、年1回行われます。
すばる文学賞
『すばる』を刊行する集英社の新人文学賞です。分量は400字詰め原稿用紙100枚〜300枚(4万字~12万字)で、受賞者には正賞として記念品と副賞として100万円が贈呈されます。
選考委員には『蛇にピアス』で芥川賞を受賞した金原ひとみ氏を含む計5名が就任しています。倍率は約917倍で、年に1回行われます。賞金は100万円と、新人賞トップクラスの金額です。
新潮新人賞
『新潮』を刊行する新潮社の新人文学賞です。分量は400字詰め原稿用紙250枚以内(10万字)で、受賞者には特製記念ブロンズ楯と50万円が贈呈されます。
選考委員には『共喰い』で芥川賞を受賞した田中慎也氏が就任しています。倍率は約1764倍です。毎年1作品は選ばれています。
太宰治賞
三鷹市と筑摩書房が共同で主催する新人文学賞です。受賞者には記念品と100万円が贈呈されます。分量は400字詰め原稿用紙50枚〜300枚(2万字~12万字)です。
選考委員は大学教授としても活躍する奥泉光氏を含む計4名です。PR誌「ちくま」と公式サイトで発表されます。
倍率は約1303倍で、年1回開催されます。第1回から第14回までは筑摩書房のみで行っていましたが、業績悪化に伴い休止し、太宰治没50年の1999年から三鷹市と共同という形になりました。
最後に
上記の内容を以下にまとめました。
賞品 | 倍率 | 規定 | 回数 | 選考委員 | |
文學界新人賞 | 万年筆・50万円 | 1275倍 | 70枚~150枚 | 年2回 | 東浩紀氏等 |
群像新人文学賞 | 50万円 | 1544倍 | 70枚~250枚 | 年1回 | 高橋源一郎氏等 |
文藝賞 | 万年筆・50万円 | 1430倍 | 100枚~400枚 | 年1回 | 村田沙耶香氏等 |
すばる文学賞 | 100万円 | 917倍 | 100枚~300枚 | 年1回 | 金原ひとみ氏等 |
新潮新人賞 | 盾・50万円 | 1764倍 | ~250枚 | 年1回 | 田中慎也氏等 |
太宰治賞 | 記念品・100万円 | 1303倍 | 50枚~300枚 | 年1回 | 奥泉光氏等 |
賞ごとに政治色が強かったり、若者向けだったりと違いがあるので、受賞作品にもその色が出ます。小説を応募する場合はその雑誌の性質や受賞作品の傾向を見て、自分の作品と合っているか確認すると通る確率が上がると思います。
自分の作風との相性だけでなく、商品や倍率も比較するうえで重要な尺度になってくるので、それも含めてお気に入りの賞を見つけてみて下さい。