『やまなし』は、教科書シェア50%を誇る光村図書の小学6年生の教科書で長年採用されている定番教材です。小学生の頃、「クラムボン」という謎すぎる言葉に悩まされた人も多いのではないかと思います。
今回は、宮沢賢治『やまなし』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します!
Contents
『やまなし』の作品概要
著者 | 宮沢賢治(みやざわ けんじ) |
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発表年 | 1923年 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
ジャンル | 童話 |
テーマ | 青い幻灯 |
『やまなし』は、1923年に『岩手毎日新聞』(4月8日)で発表された宮沢賢治の童話です。蟹(かに)の兄弟の日常が、美しく描かれています。Kindle版は無料¥0で読むことができます。
『やまなし』の絵本は、宮沢賢治作品に絞って制作をする画家の田原田鶴子(たはら たずこ)さんに手掛けられています。イラスト付きの用語解説や、『やまなし』の授業で有名な教師の野口芳宏(のぐち よしひろ)さんによる解説も魅力です。
著者:宮沢賢治について
- 仏教と農民生活に主軸を置いて創作活動にはげんだ
- 宗派の違いで父親と対立
- 理想郷・イーハトーブを創造
- 妹のトシと仲が良かった
宮沢賢治は熱心な仏教徒で、さらに農業に従事した人物です。宗派の違いで父親と対立し、なかなか和解には至りませんでした。故郷の岩手県をモデルにした理想郷・イーハトーブを想像で創り上げ作品に登場させました。
妹のトシは賢治の良き理解者で、トシが亡くなったときのことを書いた『永訣(えいけつ)の朝』は有名です。
賢治は、コスモポリタニズム(理性を持っている人間はみな平等という思想)の持ち主であるため、作品にもその色が出ています。生前はほとんど注目されず、死後に作品が評価されました。
『やまなし』のあらすじ
蟹の兄弟が、川底でクラムボンについて話をしています。そんなとき、天井を泳いでいた魚が、突然飛び込んできた何者かに食べられてしまいました。
蟹の兄弟は、恐ろしさに震えます。上流からは、白樺の花が流れてきました。そこへ、兄弟の父親がやってきます。
登場人物紹介
蟹の兄弟
人間の子供のように、小さな争いをしながら川の底で暮らしている。
かわせみ
ときおり水の中に飛び込んできて、魚を捕食する。
『やまなし』の内容
この先、宮沢賢治『やまなし』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。
一言で言うと
美しい日常のワンシーン
5月
蟹の兄弟は、「クラムボンが笑ってたよ」「クラムボンはわらったよ」「クラムボンはかぷかぷわらったよ」「クラムボンは跳ねて笑ったよ」「クラムボンはかぷかぷわらったよ」と話しています。
2匹が天井をを眺めていると、とつぜん泡が立って鉄砲玉のようなものが水中に飛び込んできました。次の瞬間、魚は跡形もなく消えてしまいました。2匹は恐怖のあまり、ぶるぶる震えます。
父親に聞くと、「そいつはかわせみって言うんだ」と言いました。すると、上流から話白樺の白い花びらが流れてきて、川底の砂の上に影を落としました。
12月
蟹の兄弟は大きくなりました。川底はとても静かで、遠くから水面が波立つ音が聞こえます。いつものように兄弟が泡の大きさを比べ合っていると、突然トブンと黒いものが水中に飛び込んできました。
兄弟は「かわせみだ」と怖がりますが、父親は「やまなしだ」と言います。やまなしはいい匂いをふりまいて流れ、木に引っかかって止まりました。
「2日くらい経つと、やまなしは落ちてきて美味しい酒ができる」と父親は言います。そして、父親に導かれるままに、兄弟は家に帰るのでした。
『やまなし』の解説
クラムボンの正体
「クラムボン」とは、眩(くら)む(まぶしい)とぼんぼ(ぼんやりまるい)という言葉が組み合わさってできた造語で、「鈍い円形のまぶしいもの」だとする説があります。
つまり、「クラムボン」の正体は川底から見える太陽なのです。そして、クラムボンが殺されるときは太陽が雲で隠れるときです。「やまなし」と関連のある「おきなぐさ」でも、雲に隠れる太陽が描かれます。
また、流れてきた金色のやまなしは、クラムボンである太陽のイメージと結びつきます。
日置 俊次「宮澤賢治「やまなし」再論 (大上正美教授退任記念号)」(『青山語文』2013年3月)
『やまなし』の感想
擬音
私は賢治が使う擬音語が好きなのですが、『やまなし』には特に面白い擬音語がつかわれていると思います。
「クラムボンはかぷかぷわらったよ」「泡はつぶつぶ流れました」「ぼかぼか流れていくやまなし」「虹がもかもか集まりました」など、思わずくすっと笑えるものばかりです。
ぼかぼか流れるというのが、何だかかわいくて特にお気に入りです。小学生のころ、音読をしながら「どうやったら、かぷかぷ笑えるんだろう」と考えた記憶があります。
ちなみに、やまなしは梨ではありません。「ズミ」という小さいさくらんぼのようなものだという説が一番支持されていますが、「あまりにも小さいので違うだろう」という学者もいます。りんごであるという説もあり、山梨の正体についてはまだ謎です。
『やまなし』の朗読音声
『やまなし』の朗読音声は、YouTubeで聴くことができます。
『やまなし』の論文
『やまなし』の研究論文は、以下のリンクから確認できます。表示されている論文の情報を開いた後、「機関リポジトリ」「DOI」「J-STAGE」と書かれているボタンをクリックすると論文にアクセスできます。
最後に
今回は、宮沢賢治『やまなし』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。
謎の多い物語ですが、きらきらした水の中が想像できて、読み終わったあとに爽快感を覚える作品です。ぜひ読んでみて下さい!
↑Kindle版は無料¥0で読むことができます。